転勤妻 灼熱印度
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サイト【転勤妻】 運営主宰者 大向 貴子

第8回 結婚事情

インドではお見合い結婚が主流だ。

それも日本のお見合いとは、事情が少し異なっている。
憲法上はとうの昔に廃止されているのに、現在でも職業、結婚とすべての面でカースト制度が大きな影響を及ぼしている。
結婚は同じカースト内でするものであり、その相手は親が探す。
インド人の結婚は、親の承諾なくしてはあり得ない。
子供としても、親が決めた相手なら間違いはないという安心もあるのだろう。
大都市では最近、自由恋愛の末に結婚というパターンが見られるようになってきたというが、まだまだ少数派である。
不幸にも恋愛の相手が同一カーストでない場合は、結婚への道は困難を極めることになる。
若い女性が恋人との将来を悲観する余り、自殺という道を選んだ悲惨なケースもある。
インドではカーストの枠を超えて結婚をするというのは、親子や親戚の縁を切られるほどの大事件となるのだ。

全国紙では毎週日曜日、結婚相手の募集欄が数ページにわたって掲載される。
公然とカーストが明記され、区分けされているから驚く。
色華やかなそれらの記事をよく見ていると、思わず笑ってしまうような記述もある。
本人だけでなく、親が自分の息子や娘の相手を募集している広告がたくさん出ているのだ。
自画自賛もさることながら、親が自分の子供に対する評価がこれほど高いのも面白い。

下記、一例を紹介する。

  •  「息子は教養の高いハンサムな素晴らしい青年です。色白で高い教育を受けている美しい女性を求む」
  •  「タバコを吸わない細身で長身の高い学歴を持つ紳士を希望しています。私はMBAを取得した、若く美しい女性です」

・・どの広告も本人の写真が付いていないのが、なんとも残念だ。


<写真をクリックすると大きくなります↓>

公園で恋人同士仲睦まじく

新聞の結婚相手募集広告

夫の仕事相手であるU氏は、インドではトップエリートの1人である。
インド国内で最難関といわれる大学を卒業後、スタンフォード大学に留学し、MBAを取得してインドへ帰国。
事業を立ち上げて、現在では2千人を超す従業員を雇う会社のトップとなった。
その彼も親が決めた女性と結婚をして、現在も幸せな結婚生活を送っている。
欧米で教育を受けても、結婚はきちんとインドスタイルを貫いている。
インドでは保守的な考えが、依然として残っている。
恋愛などにもタブーが多く、男女が公然とふれあうなどの行為はよしとされていない。
それでも公園などでは、若いカップルが木陰で身を寄せ合っている姿をよく目にする。
仲睦まじくしている恋人同士の様子は、世界中共通の光景である。
そんな彼らでも結婚となると話は別、という若者も少なくないようだ。
「若いうちに恋愛は楽しむけれど、結婚は親が決めた相手とする」と、コメントしているカップルの話が何かの雑誌で紹介されていた。

日本人の私からすると、インドでの結婚事情はなかなか理解しにくい面がある。
これも長く続いてきた歴史と文明の賜物であり、文化の違い。
結婚ひとつとっても、世界中様々な形があってもおかしくない。

 



2007/5/15

つづく

 
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