<解説>
CDCは5月16日の「MMWR」に、米国で発見されたSARS患者345名を上の表に示すように、「Probable Case」(SARSの可能性が高い患者)と「Suspect
Case」(SARSを疑う患者)の2群に分け、この2群の患者について各項目別に分析しています。
■年齢別分析; 両群とも18歳から64歳の年齢に患者が多く、これはWHOが東アジア地域で認めている点と似ております。
■性別; 2つの患者グループ間に男女の差はないようですが、この項目ではSARSの流行地での、男性および女性の社会的活動、仕事の内容が反映しているかも知れません。または、教育の格差も重要な影響を及ぼす可能性があるかも知れません。
■人種; 白人、アジア人系に多いのは、海外旅行の頻度に関係するのではないかと思われます。このことは、次の項目、感染の可能性で、旅行が大多数を占めている点からも、うかがうことができるでしょう。
■感染の可能性; 大多数を占める旅行の他、注目すべきことは、医療関係者(医師、看護士、その他患者に接して仕事をする人達)に感染者が極めて少ないことです。これはアジア諸国からの報告と異なり、米国において、これら医療関係者の感染予防対策が確実であるということを示していると思います。
■入院期間; SARSの可能性が高い患者のほうが、SARSを疑う患者に比べて、長期間入院する場合が多いが、呼吸補助器で呼吸を助けて貰った患者は、僅か5%に過ぎなかったことを示しております。
SARSの病原ウイルスであるコロナウイルス検査で確認できたのは、「SARSの可能性が高い患者」からでも僅かに9%であり、「SARSを疑う患者」からは、全く発見されていません。
この検査に関する限り、SARS感染を確認する決め手にはならないようで、発病の初期と、2〜3週間後の、コロナウイルスに対する免疫抗体価の上昇も知りたいものです。
因みに,SARSに似た症状を示す、呼吸器系感染症の1種であるインフルエンザは、米国でも日本と同様に、毎年11月から3月にかけて流行を起こし、1972年から1995年にかけて、19回の流行があり、流行の規模により2万人から30万人以上の感染者が入院し、流行時に平均1万4千人が死亡しています。インフルエンザに感染して死亡する危険度の高いのは65歳以上の人、または循環器系、呼吸器系、その他の慢性疾患を持っている人であると言われております。
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