このような形で学年やりなおしを勧められた日本人の子供達のケースは地域を問わずありました。相談者のお子様の場合は4月末から転入して、1ヵ月余りで学年が終り、9月からも同じ学年を続けるように現地校が決定したとのこと。お住まいが日本人があまりいない地域で前例がなく、学校も参考にする情報が乏しいようですね。
まず子供が学年を落とす場合についてですが、お母様のおっしゃるとおり精神的な発達上は、同年齢の子供たちと同じクラスになるほうがもちろん理想であることは確かです。学年を落とすのは日本的には「落第」のようなマイナスなイメージがありますし、本人も「どうして自分だけ上がれないの」とひけめを感じる可能性はあります。
しかしながら、実はニューヨークやカリフォルニアなど日本人が多い地域こそ、学年を1年落として転入するケースが一般的に多く見られます。もちろん地域によっても学校の方針なども違うでしょうが、前例的にはわざわざ希望をして1学年下げて転入させる家族は少なくなく、学年を下げること自体問題だと思われるということはないようです。これはもちろん子供が英語がわからないためということもありますが、日本の学校との学年の区切り方の差にも原因があります。例えば4月に日本で1年生になった子が、4月末にアメリカで現地校に1年生で転入しても、すぐに6月で学年は終ってしまいます。9月から2年生に上がってしまうと、1年生をほとんどやっていないことになります。これでは1年生で学ぶべき基礎のスキルが身につかず、しかもわからない言語で急に次の学年の内容となると、学校側も保護者側も1学年下げて始めるほうが、本人のためには最良であると考えているわけです。低学年だからと言って学習するためのスキルの習得は軽視できないものです。ですので、考えようによっては9月から学年を落とすのは「最悪の事態」ではなく、むしろ余裕ができてお子様にとっては「ベストな政策」だと学校は判断したのでしょう。
しかし現在どうしても進級を、ということで転校を検討されているとのこと。今までにすでに幼稚園と小1として現地で学年度を終え、誕生日的にもこちらの学年に合わせるという理論でいけば、転校先での進級は十分可能だと思います。学校によっては、逆に英語力など関係なく、同じ年に生まれた子は必ず同学年にする、という方針のところもあります。ただ転校の際、現在の学校からのtranscript(成績表とコメント)が必要になると思いますが、その時に学年問題の話が出てくるかもしれません。また日本人が多い学校であれば、過去の経験から、どのような学年対策をとっているかも事前に調べられたほうがいいかもしれません。もし学年の話が出た時は、新しい学校側と話しあって、あらゆる方向でプラス、マイナスを考慮され、お子様にとって最良の結論を出されることを願っています。