滞米2年の8年生になる息子がいます。日本人が少ない地域に住んでいることもあり、まわりのアメリカ人も非常に親切で、友達にも恵まれました。息子は英語力も伸び、アメリカに適応し、現在、来年予定の帰国を嫌がっています。できるだけ本人の能力を活かしたいのですが、どのような選択があるのか教えてください。
(ニューヨーク州、母)
なかなか現地校に適応できず、英語で苦労する子供達が目立つ中、息子さんはアメリカに溶け込んで、文化や言語もみるみる吸収していったすばらしいケースです。息子さんが帰国を嫌がっているということですが、もしご両親が本気でこのままアメリカで教育を続けさせる方針であれば、高校から全寮制の私立校に入ることも考えられます。
(私立でないと、学生ビザが取れません)その場合でも、親は長期滞在できるビザは取れないので、万一に備えて信用のおける人(親代わり)を探されると良いでしょう。あるいは、留学生としてホームステイを受け入れてくれる家庭を探してみるのも一考です。
次に、日本に帰国した場合ですが、現在帰国子女受け入れ校はかなり増えています。しかし、実際どの程度帰国子女の能力が活かされるかは学校にもより、日本という土壌でそのような学校が数多くあるかはわかりません。選択を間違えれば息子さんが逆に不適応を起こす可能性もあります。どちらかと言えばアメリカ的な、自由な発想を重んじる環境の充実した帰国生受け入れ校、またインターナショナル・スクールに転校するという方法もあります。
これは私の個人的な意見ですが、まだ息子さんが思春期の間は、家族が一緒にいたほうが基本的にはいいような気がします。男の子は成長過程で父親という「大人の男性の指導」が必要でしょうし、女の子もいろいろ悩みを抱えるようになります。家族がしっかりと、子供の精神的サポートの土台となることは重要です。もし日本に帰って入った高校が子供に合わなかったとしても、それなら「大学は自分の意志でアメリカに戻るぞ、だから英語を頑張るぞ」くらいの意気込みが彼自身に出れば本物でしょう。
また、息子さんは現在アメリカ文化を吸収するのに夢中のようですが、将来アメリカに戻ってきた時、アメリカ社会に溶け込む一方、「外国人として自国文化を知っているか」がどれほど重要かを痛感する日が来るでしょう。その時のためにも、日本に帰国し、社会や歴史、文化の勉強をしておくことも、息子さんの将来やアイデンティティーの確立という意味で、大切なステップとなることでしょう。このような事柄を念頭に置いてあらゆる可能性を検討し、息子さんに合った進路を指導してください。
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