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「クラスで発言しない息子」

在米5年の10年生の息子がいます。英語は問題なく習得し、学校の科目も宿題やテストなどは良い点数をとります。しかし、いつも先生から授業で全く発言しないことを指摘され、そのため成績をワンランク下げられているという状況です。息子には普段の生活では普通にしゃべるのだから、クラスでも発言するようと注意しているのですが、みんなの前で発言するのはどうしても得意でないの一点ばりです。何かいい方法はあるでしょうか。
(ニューヨーク市、母)


アメリカでは日本と違い、授業で発言することが”participation”(参加していること)
とみなされます。よって、これが成績の一部として評価されのが一般的で、発言をしない生徒はその分の評価は低くなり、成績にも反映します。アメリカ人の学生はこれをよく知っていて、テストなどの点数は悪くても、「発言」で点数稼ぎをしているような生徒も多くいます。これは、英語に自信がない外国人生徒には不利ですし、ネイティブに囲まれた環境で慣れない言葉で発言するのは、かなり勇気のいることです。

しかしながら、これは実際日本人だけでなくアジア系一般の生徒に通じる現象のようです。例えばアメリカ生まれのアジア系で英語になんら問題もないのに、他の人種と比べるとクラスではおとなしいという傾向があります。アメリカ人の先生はこれを「アジア系は恥ずかしがり屋で間違いを恐れるから」と単純に解釈しているかもしれません。しかし、これはアメリカ育ちでも親やコミュニティーから受け継がれた文化背景や異なるコミュニケーションのスタイルがあるようです。例えば中国や韓国でも、日本とも似た「出るくいは打たれる」という発想があり、このためみんなの注目を浴びることは好ましくないとされています。また、もともと自分の意見や考えを持つ訓練がなされていない画一的な社会背景があります。さらにこれらの国の学校では、伝統的に知識や情報は先生から生徒へと一方的に与えられるものという形式が重んじられています。このため、生徒が先生に意見などを言うと生意気と取られ、逆にマイナスになることがあります。ある韓国人男子が小学校と中学を5年間アメリカで過ごし、学校で発言するように訓練され、韓国に帰ってからもその調子でクラスで発言を繰り返したところ、先生から「いい加減にしろ」と怒りをかった例があります。このようなクラスでのアジア的コミュニケーションスタイルは、残念ながらアメリカのスタイルとは全く逆と言っても過言ではないでしょう。これらの要因から、アジア系の生徒は現地校という環境で教育を受けていても、親の文化や気質を受けて育っているので、授業になるとなかなか発言をためらうことが多いのもうなずけます。

さて、授業で発言をするための方法ですが、何かについて「意見」や「主張」を述べるのは、本質的な部分で意見を持っていないと難しいですし、それをどう論理的に表現するかも話すスキルを要します。発言として簡単なのは、まず事務的なことでも学習の内容に関してでも、「質問をする」ところから始めると良いでしょう。うまくいったケースですが、日本から来て間もない学生Aさんは、授業でアメリカ人生徒が「私も、私も」と発言をするのを見て圧倒され、また発言しないと「参加」したとみなされず成績にひびくことも知りショックを受けます。しかし自分は実際学習の能力はあるのに、発言しないために点を落とされるのは不公平だと感じ、「こうなったらひとつの授業で最低2回手を上げて何か言う」と自分でルールを決めて実行しました。とりあえず質問を考えて、それをどう言うか文を頭で考えて、ドキドキしても思いきって手を上げて発言をしてみました。そうするうちに、だんだん人前で話すことに慣れ、今では無理やりでなくても自然に発言し、意見も言えるようになったそうです。もちろん先生とのコミュニケーションもよくなり、成績の"participation"も良くなったということです。これを実行するのはかなり勇気がいることですが、発言する努力を見せるだけでも先生からの印象は違ってきます。是非参考にしてください。

 

 



*この回答はあくまでも一般論で、 全てのケースにあてはまるわけではありません。


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