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「アメリカ生まれの言語教育は?」

アメリカで生まれた3ヶ月の新生児をもつ母です。現在家の中は日本語のみの環境ですが、最初から英語環境にも触れさせるか、まず日本語のみで育てるか悩んでいます。ちゃんとした言語発達のためには、幼少の時は母国語で固めたほうがいいとある人に言われましたが、その反面幼稚園に行き出す頃に英語ができないと問題だとも考えています。最終的にはより完璧に近いバイリンガルにさせたいのですが、最良の方法はないでしょうか。  
(ワシントンD.C. 母)


アメリカ生まれのお子さんをお持ちの方は、多くがこの問題で悩まれるようです。最初から日本語と英語で育てていれば、自然にバイリンガルになるのは間違いありません。しかしながら、バイリンガルといえども全く両方の言語が問題なく操れるようになるには努力が必要です。言語のスキルは流動性のあるもので、まわりの環境や本人の心理的な変化によっても左右されます。片方の言語が圧倒的に主流で、もう片方はあまり伸びない場合もありますし、両方をバランスよく流暢に話せても、両方で読み書きレベルが低い場合など、ケースは様々です。

よく最初からバイリンガルで育てられた子供で、学校に上がってから「英語の語彙が年齢のレベルより少ないので、何かを理解したり、考えを表現する時に困難が見られる」という指摘があった、という相談を受けます。乳児の時からバイリンガルで言語のインプットをされた場合、2歳や3歳の時点で、それぞれの言語において語彙がモノリンガルの子供よりかなり少ないという事実が、実際に研究されたデータで明らかになっています。これがドイツ語と英語など、共有する部分がかなり大きい言語であればまだ軽いですが、英語と日本語となると、言語間に距離があり様々な要素で全く異なる部分が大きくなります。このため、両方の言語で語彙や複雑なセンテンスの習得において遅れをとることが指摘されています。しかしながら、ある程度の年齢になるとどちらかが主流になり、片方の言語が衰えていく一方、もう片方は学年レベルに追いつくケースが多いとも言われています。ただこれは、環境や子供の能力にもよりますので、「バイリンガルで育ててみんなだいじょうぶ」と一般化するべきではありません。

さて最も気をつけるべき点は、この幼少時の言語発達の遅れが「認知力」や「思考力」の発達に影響する恐れがあることです。言語は全ての思考力、学習力の基盤を作りますが、このレベルが低いと学習力で問題が発生します。学校によってはこれを「発達障害」や「学習障害」が隠れているのではないかと指摘するところもあります。こうならないための対策としては、両方を完璧にしようとするよりも、メインの言語とサブの言語を決めることです。メイン言語は基本的には学習言語となりますので、語彙、文法、読み書きにおいて環境的にもインプットの努力をして、学年並みの発達をめざしてください。サブ言語は会話がある程度流暢であれば良し  としようという程度に設定し、本人の発達や能力に応じて調節していくと良いでしょう。

    

 

 



*この回答はあくまでも一般論で、 全てのケースにあてはまるわけではありません。


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