【Fami Mail】 特別寄稿連載 帰国子女子育て記



帰国子女となった子供と共に歩んだ15年

目次                                          海外赴任アドバイザー
        
 黒川 美佐子 
(英国4年半・中国1年半在住経験)

著者HP>海外帰国子女受験体験記
第6回 帰国子女中学入試ー学校選択のための情報の集め方

 次男、無事帰国
英国で最初に住んだ築百年の家
 子供達の夏休みもあっという間に終わってしまいました。長男は、大学進学のための予備校の講習や自習室に通いつめ、次男は、1ヵ月間、英国で語学研修と音楽三昧をして8月末に戻ってきました。

 台風の影響で揺れる往きの機内で、たまたま隣の座席にいた英人熟年夫婦に興味を持たれて、寝る暇もないくらいにこの外国人夫婦に話しかけられた次男。帰国して数年間という長い間、英語に対して全く訓練していなかった錆付いた頭では、どう対応すれば良いものか、今思い出しても冷や汗ものの辛く苦しい英国までの12時間だったそうです。

 出発時には、このように不安げな次男でしたが、帰国した時の次男は、満面の笑顔でした。語学学校には、英国で寄宿舎生活を送る外国籍の生徒や、アジアや中近東やヨーロッパからの留学生が多く、中には、この秋から英国の学校に入学するため、英語を勉強している、という生徒もいたそうです。生徒の年齢は、15歳〜17歳がもっとも多く、活気溢れる生徒達に囲まれて、充実した日々を送れたようでした。


偶然に左右される進学先

 中3の夏といえば、本来なら、高校入試のため勉強一色で過ごさなければいけない時だと思いますが、幸い次男は中高一貫校に通っているため、時間を有効に使うことができました。

 帰国したばかりの頃には、子供の小学校の心配ばかりで、中学受験のことをあれこれ考える状態にはない、というのが帰国したばかりのお母様の状態だと思います。そうこうしているうちに、時間はあっという間に過ぎて受験に巻き込まれていく・・母親としては、それでも、我が子の個性にあった学校選びをしているつもりですが、情報が入ってきた学校の中から選んでしまっていることも多々あるようです。

 一般中学受験に較べて、帰国子女中学受験は、現地で国内の受験事情を知ることも難しいですし、現地で手に入る情報は、限られています。たとえ、帰国してからの受験となっても、準備期間も十分にとれず、そのために選択肢として考える学校数が少ないまま受験の日になってしまうように思います。

 お子様の将来は、親の意向に大きく左右されますので、今回は、私が気がついた帰国子女の中学受験、その情報の集め方、学校選択のしかた、注意点などを書いてみたいと思います。ただ、これは、帰国子女中学受験を経験した子を持つ母として、不思議だなあ〜、こういうことかもなあ〜と、考えついたことばかりです。受験のプロとしての意見ではありませんので、ご了承ください。


 学校説明会

 学校説明会には、主に、学校がその所在地で開催するもの、学校が関係者のみを対象として行うもの、学校同士が集まって開催するもの、地域別に開催されるもの、塾が開催するもの、子供が模試を受けている待ち時間に父兄対象に開催されるもの、があります。

 学校が開催するものは、受験までの数回に亘って開催されます。特に、受験日間際の最終の学校主催の説明会には、出席するのがよい、とされています。試験作成担当者が、話の中でぽろっと試験内容を漏らす場合や、はっきりとこの説明会に参加したご父兄に特別にお知らせいたします、という場合もあるからです。

 学校が関係者のみを対象に行う説明会、これは、卒業生が親類縁者にいる場合に参加できるものです。説明会のみならず、受験を考えるのであれば、親の卒業大学と学校の理事長など有力者のそれが同じ場合には、同窓会のコネクションが使える場合もありますので、様々な角度から知人を探してみるのも良いと思います。

 学校同士が集まって開催する説明会は、難易度、求める子供の学力、学校側の姿勢、が似通っている場合が多いようです。ただ、せっかくこういう説明会に参加して感銘を受けても、子供の学力が上昇した場合や志望校が変わった場合には、学校選択を考え直さなければいけない場合があります。

 地域別に開催される説明会は、難易度や、学校が求める子供の学力などが各校異なる場合もあるので、思いがけない学校に出会う可能性があります。また、将来、子供の学力が上昇した場合に、志望校を変えるための情報収集ともなります。

 塾主催の説明会では、その塾と学校との関係が見え隠れします。子供の志望校のことをよく理解している塾と、情報誌に載っている以上は志望校については得ることがない程度の理解しかない塾、の違いなど、他の塾の説明会に参加していると、比較することができるので、様々なスタンスの塾の説明会に参加するのも面白いかもしれません。

 子供が模試を受験している最中に開催される説明会は、統計処理された膨大なデータによるものなので、客観的な分析を聞くことができます。これまでに挙げた説明会は、主に学校自身が自校の良さをアピールする主観的なものですが、この模試の最中に行われる説明会は、客観的なものです。模試の回数を重ねるごとに、志願者はどのように推移しているかなど、データ、資料など、更に詳しい情報をお知りになりたい方には、お勧めです。

 海外に在住の方でしたら、帰国子女専門の塾の説明会や、学校が海外を巡回して行う説明会に出席することが多いかと思います。ただ、比較するために、数回の説明会に出席してみるという選択の余地はありませんし、別の視点からその学校を知ることも難しいことと思います。

 できれば、一時帰国する前には、インターネットなどで、学校説明会の開催予定を探したり、日本の大手の進学塾にコンタクトを取り、説明会の参加への可能性を探ると良い、と思います。また、大手の進学塾の塾長は、個性豊かな上に各々得意分野がありますので、話を伺うのもよいかと思います。元気が出ると思います。


 
手当たり次第集めた学校案内
久しぶりに会う友人と
 
説明会や塾の受付においてある、学校案内などの資料は、とにかく何でも手にして持ち帰る・・これは、私の悪癖の一つです。本当に申し訳ないことですが、ほとんどは、役にも立てず、資源ゴミとなってしまいます。ただ、その中で気がついたことがあります。

 学校案内には、情熱のみなぎるパンフレットと、淡々としてさらっと書いてあるパンフレット、この2種類があるように思います。

 先生の熱い思いや、生徒のやる気、設備のよさ、勉強に偏らない真の教育、スポーツ実績、進学実績、特別なコースの案内、など、力を入れている方向は学校により異なりますが、立派な構成で作成され、たまには、おまけのペンシル、DVDなどがついているパンフレットや、たった数ページのシンプルな構成のパンフレット・・・不思議なことに、前者のパンフレットは意識しなくても目に付きやすい場所においてあり無料で塾の受付などで配布されていることが多く、後者のパンフレットは自分で学校に依頼して有料で取り寄せになることが多いのです。

 実際入試に使用した過去問題や願書も、同じです。依頼すれば無料で郵送してくれる学校と、学校でのみ有料でしか手に入らない学校とがあります。

 果たして、受験生は、その学校に入れていただくのか?学校は、その受験生に入ってもらいたいのか?その漠然とした感覚の差が、学校案内、願書、過去問題が実際手元に来るまでの流れの中で、ぼんやりと理解できると思います。


 学校案内集は吟味して

 タウンページのように分厚い学校案内集には、財団法人発行のもの、ボランティア団体発行のもの、出版社発行のもの、塾監修のもの、など何種類もあります。

 帰国子女受験だから、と、帰国子女向けの学校案内集だけを手に取るより、一般の中学受験に向けた学校案内集にも是非、眼をとおしてもらいたいと思います。

 たとえば、最寄り駅から学校までの地図は必ず掲載されていますが、それが地図ではなく、実際の距離を無視した図になっているものもあります。とにかく、自分の知りたい情報を正確に書いてある学校案内集を実際書店で手にとってご覧になって、購入されることをお勧めします。


 
帰国して国内の進学塾に入塾するとき

 帰国して国内の進学塾に入塾する時には、塾長が帰国子女を指導した経験を持っているか、帰国子女だった講師がいるかなど、なるべく帰国子女に理解がある人が一人でもいる教室を選んでみては如何でしょうか。

 また、提示される金額とスケジュールは、日本に生まれ育った子供向けのものだ、と私は、思います。子供の生活に合わせて、自分でアレンジすることも必要かと思います。日本の慣れない学校と、英語の保持教室や英語受験に向けての塾に通いながら、パッケージされた一般生向けのスケジュールをこなすのは、帰国子女には大変なことです。塾が提示する学費とスケジュールは、あくまでも見本、例えば、工事前に業者が提出する、見積書のようなものと理解して、塾長に個別に相談してみるのも良い方法かと思います。

 また、塾に通うことによって、子供の身体や心に変化はないか、無理していないか、など、母親が気を配ることも大切だと思います。


 
学校案内や説明会ではわからないこと
犬と友人と
 受験生の親としては、試験に合格するための、細かいノウハウも知りたいかもしれませんが、子供を何年も預けるわけですから、やはり入学してからのことは、大変気になります。

 どんなに学校案内を熟読しても、説明会に足しげく通ってみても、残念ながら見えてこないこともあります。

 健全な学校経営はされているのか?先生同士の意思疎通はどうか?常勤、非常勤の割合はどうなっているか?シラバスはきちんと整備されているか?先生の質のばらつきは少ないか?全員ががんばった結果の大学進学実績か、特別クラスなどで一般生とは別のカリキュラムで教育された一部の生徒が頑張ったための進学実績か?途中で退学を余儀なくされた生徒はどのくらいいるのか?などです。

 学校から得ることができない情報は、インターネットの情報や在校生の父兄からの口コミ情報などから得ることも可能です。


 
子供の眼になって

 一つの塾の説明会ではわからないことや見えてこないことでも、別の塾の説明会に参加することによって見えてきます。志望校を大体決めた場合においても、主催者が異なるいくつかの説明会に出ることによって、より深く学校のことを知ったり、この学校で良かったんだ、と確信を深めたり、あるいは、あまり良くないと思っていた学校の印象が、ガラっと180度変わってしまうような説明会に巡り合うこともあります。

 より良い判断をするためには、できる限り機会を見つけて情報を得る努力をし、多方面から総合的に客観的に判断する、ただ、それだけだと思います。また、親として冷静に良識ある判断をすることも大切ですが、子供の眼になって子供の気持ちになって、学校を吟味するという姿勢も大切だと思います。文化祭や体育祭を見学することによって、その学校に入学することに憧れ頑張る、そういう具体的な目標を子供自身が見つける機会も与えてあげながら、気持ちの余裕を持って、親子で楽しみながらゴールに向かう・・・そんな体勢をできるだけ早く整えてあげてほしい、と思います。



                                      2005年 9月15日

                                               つづく


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