日本の財政規律に関する医療費の問題から、健康保険制度の改革が叫ばれて久しい。しかし、先進各国の医療費の伸びに比べて日本の医療費の増加は比較的緩やかである。医療費の増大は医学が進歩し、平均寿命が延びればそれに比例して増大することは当然に想定できる。言い換えれば、それだけのメリットに相応した負担増があって当然と言えるが、これに言及する政党は皆無である。改革を考える場合に日本の制度と外国の制度を比較してみるのも参考となるであろう。 一般的に共産主義国は医療費が無料と思われている。 それだけ聞けばうらやましい限りであるが、それほど甘くはない。中国の健康保険制度は、都市籍と農村籍とで制度が異なる。つまり、都市部に住む労働者向けには基本医療制度があり、これとは別に農村部に住む農民向けの新型農村合作医療制度がある。この他自営業者や農村から都市部に出稼ぎに来ている多くの人々は無保険者となっている。制度を利用する患者の立場からみて、不都合な点は、保険給付の条件がどちらも居住区の二つの公立病院または一つの中央病院での治療に限定されていることである。つまり、日本のようにどの医療機関でも受診が認められるフリーアクセスではない。この背景の一つに、地域、病院、医師のランク等毎に治療費が異なる点があげられる。 また特定の医師を希望すると指名料がかかる。医師は教育、経験、実績等によりランクがあり、それぞれの料金が異なり、病院の窓口に漫w)セ記されている。このため外国人旅行者が利用する外資系医療機関は保険適用がない。先進的な医療を受けたい人は、外資系の医療機関等で治療を受けることになる。また中日友好医院の国際医療部などで治療を受けている中国人は、全て自費診療の富裕層といえる。病院での治療を受けるときは、診察費、検査費、薬剤費ともに受付後 診察・検査等に先だって全額を立替払を行う。従って病院側は、未払診療費が発生しない。 保険料は、日本の場合は労使で50%づつ(或いは60%と40%等)負担し合うが、中国の基本医療制度の場合は雇用者が10%、本人が2%を負担し、これを給与とは別に本人の医療費口座に支払われる。日本の健康保険は給付限度額はないが、中国の健康保険では患者が病気の時はこの拠出金額の範囲内で治療を受けることになる。但し、入院で650元、通院で1950元までは保険適用はない。重病等で多額の医療費がかかる場合は、大額医療互助といわれる別建ての給付があるが、問題は一定の給付限度額があり、それを超えると全て自己負叩w)イになることである。日本では、保険給付の上限ではなく、患者負担額に限度・uルがある点で制度の考え方の違いがわかる。つまり、中国では重病になったら経済力がなければ診療を受けられないのである。 日本の健康保険制度は、国民皆保険、誰でも希望する医師の診察を受けられるフリーアクセス、全国同一医療費(健康保険の点数制度による)、高額療養費制度による患者負担額の上限設定等、社会福祉的な制度であり、患者を守る理念が強く出ている。 他方中国の制度は、給付が健康保険の認める病院のみでの診療に制限されていることがあり、また、自分の支払った保険料と雇用主が支払った保険料の合計額とが保険金額(支払限度額)となる。 受診時には、治療費用の支払いを100%行ったうえで保険請求する制度であり、これは治療費と保険の自己管理ができる。これに加え、高額療養費については、健康保険側が給付の上限を定めていることは、極めて資本主義的な発想ではなかろうか。病院の受付といえども順番を守る習慣のない中、気力と体力を振り絞って行わなければならず、その上立替払いと保険還付請求手続きを行わなければならないのは、重い病気の患者ほど大変である。各国の医療保険制度の検・u椏「を行うと、日本の健康保険制度は極めて優れているといえるのではなかろうか。 以上 2009/7/27 |
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