障害と呼ぼうが呼ぶまいが、言葉を覚えるのが苦手な子供に、2ヶ国語をいっぺんに覚えさせようとすると、混乱を招くばかりでどちらの言葉も伸びなくなってしまうおそれがあります。「バイリンガルな環境」と言うとてもステキな響きとは裏腹に、「バイリンガル」どころか、「モノリンガル」(monolingual=単一言語)でもなく、どの言語も中途半端にしか使えない「ノン・リンガル」(non-lingual=無言語)になりかねないのです。
このような場合、こちらに移住して生活しているご家族には、1つの言語、つまり英語に的をしぼることをオススメしています。しかし、特に海外赴任中の場合など、そう簡単に1つの言語だけに切り替えるというのは難しいはずです。現地校では当然、現地の言葉を使うので、日本語だけというわけにはいかないし、やがて日本に帰るから、日本語を放り出すわけにもいかないし。このような場合は、とにかく、2つの言語を混乱させないよう、しっかり区別することが大切です。例えば、
1)場所で区別 (学校で英語、家で日本語。)
2)人で区別 (お父さんと英語、お母さんと日本語。または、親と日本語、兄弟と英語。)
3)時間で区別 (朝は英語、午後は日本語。または、宿題中だけ英語で、あとは日本語。)
4)曜日で区別 (平日は英語、週末は日本語。)など。
こうすることで、子供の脳の言葉の引き出しの整理整頓がしやすくなるのです。もう随分前のことですが、当時お世話になっていた日系医院の受付に、在米30年のおばさんがいました。そのおばさんの娘さんが、ある日、男の子のような超短髪になって家に戻ってきたのだそうです。そのときのことを思い出して、おばさんは、「それはもう、私は、フューリアスリーマッドだったのよ!」(furiously mad=カンカンに怒った)と仰いました。それまで日本語モードで聞いていた私は、一瞬、「あれ??」と戸惑わずにはいられませんでした。大人をも混乱させるこのような話し方は、子供に対するよいお手本とは言えません。子供は、なんでも大人の真似をして覚えます。日頃から、わかりやすいお手本を心がけたいものです。
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