■新しい法則発見? 私は、恥ずかしげもなく、日本人英語を話しているのですが、面白いことに、「自分にとって聞き取りにくい英語を話す人は、自分の英語も通じにくい」、という法則を発見しました。逆もまた真なり(数学的には逆ではないですが)で、聞き取りやすい英語を話す人には自分の英語が通じやすいのです。 これまで、日本人英語が通じやすかったのは、RPを話すイギリス人、スイスフレンチを話すスイス人、ブラジル人、スリランカ人といったところで、通じにくかったのは、RPを話さないイギリス人、ポルトガル人、ギリシャ人、イスラエル人、インド人、スコットランド人などです。 このうち、私に限らず、留学生の誰もが聞き取りにくいというのが「スコットランド英語」と「インド英語」のようです。多くの日本人にとっても、やはりスコットランドの英語は難しいと感じるようですが、インド英語はわかりやすい、という人もいます。それは、発音がカタカナ読みっぽいからだと思います。その証拠に、インド英語と似ているスリランカ人の英語の方は、私にとっても非常に聞き取りやすいです。カタカナ発音は、他の東南アジア英語にもあてはまりますよね(中国を除く)。 ただ、インド英語は、表現しにくいのですが、スリランカよりも、なんだかニチャニチャネチャネチャした発音なのです(すいませんが、いい表現が浮かびません)。しかも強調音が少なく、同じ調子でニチャニチャネチャネチャと続くので、私にとっては聞き取りにくいのだと思います。 インドとスリランカの英語の違いは、きっと、RPを話すイングランド人と話さないイングランド人や、ブラジル人とポルトガル人の英語の違い、と似ている気がします。つまり、一般的には似ていると言われる発音でも、日本人にとってわかりやすい英語っていうと、また別の切り口があるのだ、と。 ■言語の周波数
さて、聞き取りやすい英語を話してくれる人のうち、特にスイスフレンチの同僚の英語は、私にとって非常にわかりやすいものがあります。彼は六ヶ国語を話せるうえに他言語への理解も深いので、てっきり日本人向けに理解しやすい発音をゆっくりと話してくれているのだと思っていました。ちなみに、彼のように六ヶ国語とはいわないまでも、北欧、東欧、欧州の小国には、三言語以上(自国語、自国語に近いメジャー言語、英語のパターンが多い)を話せる人がたくさんいます。 さて、ところがある日、彼がティースペースで話しているセリフを遠くから聞いていると、どうやら万人に同じ英語の発音で話しているようなのです。ということはつまり、彼の英語が単純に聞き取りやすいというわけです。 その後、しばらくして、ある人から言語の周波数の違いなるものについて話を聞く機会がありました。その人によれば、あらゆる音には周波数が存在しているが、イギリス英語が多くの言語の中で最も高い領域で提供されるのに対し、日本語は最も低い周波数レベルで話されているのだそうです。 つまり、日本人にとって、イギリス英語を聞き取るのは極めて困難なことなのだと(この場合、逆は真なりではないそうです)。その他、発声法の差異など、日本人が英語が不得意な理由には、環境だけではなく言語そのものの違いが大きいのだということを教えてくれました。 そのときに、ふとその方の持ってきた周波数の分布を見ていて、フランス語が意外にも日本語と周波数が近いという事実を発見しました。ひょっとすると、彼の英語が聞きやすいのは、こんな要因もあるのかなと思った次第です。 ■単語としてのイギリス英語
さて、ずっと発音のことばかり書いてきましたが、最後に単語についてお話したいと思います。 かつて高校生の頃、イギリス英語たるものが何を意味するかを知らないながら、「イギリス英語ではoftenをオフトゥン,canをカン,と発音する」と聞いて本当かな?と思ったものですが、実際にこちらへ来てイギリス人が本当にそう発音しているのを聞くと、本当だったんだ!と、小さな感動すら覚えました。 ただ、こちらへ来て、これこそイギリス英語だなぁと思う単語は、これらではなく「Sorry」と「Lovely」という2単語です。日本の英語の授業では、「Sorryなどは自分の非を認めるような言葉なので滅多に使いません」と習ってきたのに、イギリスでは誰もが言いまくりです。アメリカ英語でいうところの「Excuse
me」や「Pardon」のかわりに、それはもう頻繁に使われます。 そして「Lovely」ですが、これは「Sorry」以上によく使われる単語で、使われるシチュエーションも様々です。頻繁に使われるのは「Thank
you」や「Fine」の代替語としてですが、それ以外にも「わかった、それで?」ぐらいのニュアンスで使われたり、そのまま「素敵!」といった意味で使われたりと、とにかくバーサタイルな言葉です。 その他、アメリカ英語に比して「Should」が頻繁に使われたり「Brilliant」「Fantastic」といった単語をよく耳にしますが、とにかく「Sorry」と「Lovely」が、やはりイギリス英語の特徴的なフレーズだと思います。そして、これらに加えて「I
mean .....」と「depends on .....」さえ覚えておけば、英国で暮らしていけるんじゃないかと思います。もっともこれらはアメリカでも使われていると思いますが、とにかく覚えておいて損はないです。さて、例えば、実験の準備を手伝ってくれる職人さんとの会話を再現してみましょう。
- Technician: 「浩一郎、君が頼んだ箱を用意しておいたよ」
- Koichiro: 「Lovely!」
- T: 「で、どの面に穴をあければいいんだい?」
- K: 「Sorry?」
- T: 「君はどの面に穴をあけたいのか?って聞いているんだけど」
- K: 「depends
on you」
- T: 「えっ、どういうこと?」
- K: 「I
mean どの面でもOK」
- T: 「了解。明日までにしておくよ。」
- K: 「Lovely!」
ってな具合です。問題はどちらかというと、自分のセリフよりは、職人さんの英語が聞き取れるかどうか、という方にあります。恥ずかしながら、ほぼ一年が経とうというのに、いまだに聞き取りに苦労している毎日なのです。
まぁでも、日本語とは周波数が違うからしょうがないな、とお気楽に構えて「Sorry」と「Lovely」だけでなんとかやり過ごしています。理系の会話だけなら、なんとかなるもんです。これからイギリス英語を学ぶ人も、私ほどじゃないにしろ、気楽に構えてください。 それでは、また次回にお会いしましょう。 |