インドという国は、好きになるか嫌いになるかのどちらかだという。
旅行をした知人の間でも感想は「魅せられた」、或いは「二度と行きたくない」かの両極端に分かれる。
これは旅行だけでなく、この地に暮らすことでも同じ感想になるのではないかと思う。
インドを嫌いになる理由は簡単、かつ満載だ。
不衛生な環境、喧騒な街、あふれるような人、物乞いの多さ、階層社会など枚挙にいとまない。
どんなにタフな人でも、精神的に参り疲弊しきってしまうことがたくさんあるのがインドだ。
それでも何かを求め、世界中から大勢の人がここへ集まってくる。
インドで暮らしていくことはたやすいことではない。
複雑に入り組んだこの国を、外国人が数年暮らしただけで理解などはとてもできない。
時間とともに慣れ、自分なりの生活を築き上げつつある今でも葛藤は続いている。
あまりにもインド独自の特色が強いため、ときおり閉塞感と疲れを感じるのも確かだ。
その一方で、この国や人が持つ、底知れぬ魅力の一片をふと感じるときがある。
11億人という人口に埋もれまいと生きているかのような人々。
圧倒的とも思える活力に、まるで国が押されているかのようだ。
誇り高きインド人は、自己主張ばかりかと思うと、ときおり細やかな心配りを見せる。
一度信頼を得ると相手の周囲にも敬意を払う。
そこまでしなくても、と思うほど配慮を怠らない。
普段が普段だけに、その場面に出くわすと感動はひとしおのものとなる。
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