転勤妻 灼熱印度
[目次]
サイト【転勤妻】 運営主宰者 大向 貴子

第11回 伝承医学 アーユルベーダ

最近日本でも人気が高まりつつある「アーユルベーダ」。
日本からの旅行ツアーで、本場の体験ができるオプショナルが組まれているパッケージもある。
このアーユルベーダの起源はインドにある。
サンスクリット語で「生命の科学」という意味である。

日本人はアーユルベーダをエステと捉えがちだが、インドではれっきとした伝承医学として考えられている。
人体はピッタ、ヴァータ、カパという3種類の生理機能からなり、それぞれのバランスで体質が決まるというのがアーユルベーダの考え方。
局部的な治療を行う西洋医学に対して、心身全体の病と捉え肉体と精神の治療法を考える。
そのひとつとしてよく知られている「オイルマッサージ」がある。
マッサージを受ける人の体調や病状に合わせた薬草入りのオイルが調合され、全身にくまなくすりこむ。
素手でオイルを伸ばし、身体に馴染ませることを基本としている。
日本の雑誌などでは、額の上から油をたらしている様子がよく紹介されている。
本場の地として有名なのが、南インドのケララ州。
専門の施設などがいくつもあり、ドクターが指導し、数週間から数ヶ月にわたる「長期入院治療」ができる施設もある。
コースのなかには、ダイエット効果があるプログラムなどもあるそうだ。


<写真をクリックすると大きくなります↓>

アーユルベーダ施術台

南インドケララ州の夕日

インドにいるからには必ず体験したいと思っていたが、南インドへ行った際に早速経験できる機会を得た。
事前に記入した問診表をもとに、ドクターと称する人からいくつか質問を受ける。
睡眠や食欲、アレルギー症状や手術歴の有無など簡単なやりとりだった。
施術するスタッフは若いインド人女性。
はじめに「このトリートメントがよい効果を及ぼすように」と、一緒にマントラを唱える。
ランプが灯され、スパイスの香りが漂う神秘的な雰囲気のなか、施術が始まった。

まず木製の施術台に座らされ、背後から頭と背中に油をすりこまれる。
その後に仰向けとなり、足から腹部、腕、肩へと大量の油を手ですりこみ肌に染み込ませていく。
マッサージというより、身体中を少し強めに撫でられているような感覚だった。
全身が油だらけになり、施術台にも油が滴り落ちていく。
つるつると滑ってしまい、助けを借りないと身体を起こすことも困難なほどだった。
所要時間は全部で一時間、浴室で油を流し落として一通りの施術が終了した。
「施術後は身体がふわふわと軽くなった」という人もいるようだが、私自身はそのような効果を実感することはなかった。
睡眠に関しても、残念ながら特別な変化はなく、いつもの通りだった。

即効性を期待するのではなく、心身ともに時間をかけてバランスを整えていく。
インドのゆったりとした時間の流れに沿った方法、それがアーユルベーダなのだろう。
神秘性を感じられるインドの一つの文化としても、今後ますます注目されていくのかもしれない。

 



2007/8/17

つづく

 
(c)Copyright 2006 Takako Ohmukai all rights reserved.