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連 載 「暮らしの中のニセ物考」-9
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新米にまだ草の実の匂いかな(蕪村) その年に収穫されたコメ、新米が各地のお米販売店にならぶころともなると、コメどころの銘柄米が人気を集めます。豊作、凶作に差があれ、銘柄米は伝統の栽培方法からくる付加価値が大きな強みともなっているのです。 最近では、スーパーや百貨店でも買えるようになり、ビニール袋入りが全盛で買い易くなったことはいうまでもありません。生活の洋風化にともない、若者の米離れが言われていても、おむすびブームは健在で、日本人に根強い魚食指向を背景にコメ人気は衰えをみせていません。何といっても、新米を炊いたご飯の美味しさと香りは格別です。 ところで、毎年、新米の季節になると大量に出回るのが「ニセ銘柄米」です。ササニシキ、コシヒカリ、など、米どころの銘柄米は「ブランド米」として各県の生産者団体が正規米の統一パッケージを作り、品質の管理を徹底させ、ブランドの差別化に当たっています。数年前、社会問題になった新品種「ひとめぼれ」、「コシヒカリ」の場合、食糧庁ばかりか、警察までが捜査にのりだしました。 「ひとめぼれ」は宮城県の古川農業試験場が「コシヒカリ」と「初星」を掛け合わせて開発したものでした。最初に宮城県を中心に、福島、岩手の三県内で栽培農家を厳選したうえ、地元で精米し、県ごとに統一した袋に詰めるなど、品質管理を徹底させたのです。 ところが、発売前に、岐阜県内や大阪市内、長崎県内などで銘柄が不明のまま、「原産地・宮城県、品種・ひとめぼれ」と記されたビニール袋に詰め、本物と同じ価格で売られていたのです。しかも、販売していた業者は無認可で銘柄不明のコメを機械的に袋に詰めて売っていたのです。 別の「コシヒカリ」の場合、都内の小売店主が袋の中で動いているコクゾウムシがきっかけでニセモノとわかったのです。袋に明記された新潟県内の農協に確認したところ、正規の袋とは別の、偽造されたコメ袋が使われていた事がわかったのです。しかも、未検査の状態で大都市に堂々と出回っていたことに、監督官庁はショックを受けました。当然ながら「有印公文書偽造、同行使罪」で東京や長野県の関係者10人が捕まりましたが、販売業者の一人は「あまりにも消費者が銘柄米に飛びつくので、金になると思ってやってしまった」と語っています。生産者のすさまじい銘柄競争の裏で費者の銘柄米指向の根強さがあることを無視できません。(明) |
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(c) Mei Sasaki,
2001
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