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病原体保有動物 その他 |
野ネズミ |
その他 |
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アルゼンチン-ボリビア出血熱 (ウイルス性病原体) |
ARGENTINIAN HEMORRHAGIC FEVER | ● |
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ラッサ熱 (ウイルス性病原体) |
LASSA FEVER | ● |
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ハンタウイルス肺症候群 (ウイルス性病原体) |
HANTAVIRUS PULMONARY SYNDROME | ● |
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腎症候性出血熱 (ウイルス性病原体) |
HEMORRHAGIC FEVER WITH RENAL SYNDROME | ● |
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鼠(ねずみ)咬熱または鼠毒 (細菌性病原体) |
RAT BITE FEVER | ● |
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ペスト (細菌性病原体) |
PLAGUE | ● |
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ネスミ発疹熱 (細菌性病原体) |
MURLNE TYOUS | ● |
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穀物を収穫する機械の出すホコリにまじったネズミの排泄物を吸収して感染 |
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野ネズミを近付けて感染 |
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野ネズミの持つ病原体をノミが媒介して感染 |
野ネズミの関連している感染症の説明
アルゼンチンーボリビア出血熱は、別名ベネズエラーブラジル出血熱(VWNEZUELAN-BRAZILIAN HEMORRHAGIC FEVER または ARENA VIRAL HEMORRHAGIC FEVER)とも呼ばれ、南アメリカで穀物を収穫する機械から出るねずみの排泄物の混じった粉末を吸い込んで発病すると言われます。有効な治療薬も予防接種もないようです。死亡率は5%から15%といわれています。 | |
ラッサ熱は、サハラ砂漠より南方、南アフリカより北方の熱帯アフリカに分布し、ネズミの排泄物で汚染した飲食物や食器から感染するばかりでなく、感染者が他の人に病気を感染させるなど感染力の強いウイルス性出血熱で、稀にヨーロッパにも感染者を輸出しています。有効な治療薬も予防接種もありません。死亡率は30%から70%といわれています。 | |
ハンタウイルス感染症の病原ウイルスは、血管の内壁を損傷して血液その他の成分を血管外にもらして障害を起こします。発熱、咳に続き肺に水がたまり、呼吸困難になり死亡するハンタウイルス肺症候群、あるいは腎臓の機能に障害を受けて尿が出なくなる腎症候性出血熱を起こします。 | |
腎症候性出血熱は、ハンタウイルス感染症と共に治療薬も予防接種も現存せず、肺症候群の感染者の死亡率は50%余り、腎症候性出血熱の死亡率は15%から20%と言われています。ハンタウイルス感染症の感染者は少ないようですが、米国を含み世界各地から報告されているようです。 | |
鼠咬熱(そこう熱)(別名そどく)はネズミに咬まれてから約10日後に発熱するため咬まれた傷が治っていて気づかないことがあり、幼児は咬まれたことを訴えない場合があります。頭痛、筋肉痛、発熱などウイルス性感染症に似た症状で始まり、続いて手や足の皮膚に発疹が現れ、一つまたはそれ以上の関節が赤く腫れて痛みます。治療薬はありますが予防接種はありません。治療しない感染者の死亡率は10%といわれます。世界中に分布しているようですが、アメリカ大陸では感染者は少ないようです。 | |
ペストは、病原細菌を持っている野ネズミに寄生して血を吸っているノミが人を刺して感染させるもので、感染した人は発熱と共にリンパ腺が腫れて痛みます。太もものつけねのリンパ腺、あるいは頸のリンパ腺に認められ、次いで、リンパ腺が大きくなり、破れて潰瘍になります。このようなペストを腺ペストとよび、抗菌薬による治療が遅れると感染者の50%から60%が死亡するといわれています。腺ペストがさらに進むと、ペスト菌は血流中に侵入し敗血症を起こし、病原菌は時に肺に侵入して肺炎を起こし、咳と共に病原菌を吐き散らし、他の健康者に病気を感染させ、治療が少しでも遅れると感染者の死亡率は100%になるといわれます。また余り多くはないようですが、感染すると病原菌が腺ペストを起こさず、直接、血流中に侵入して敗血症を起こし、血管の中で固まり中毒症状や髄膜炎をおこすこともあります。先にのべた肺炎は非常に感染力が強く、中世期ヨーロッパの人口の3分の1から2分の1が死亡したと言われる流行も肺ペストによるものです。1994年のインドでの流行では、肺炎患者については不明ですが、約800名の死亡者が出ています。有効薬である、ドキシサイクリン(商品名Vibramycin) が広く使われたようです。何れにしてもペストは、この病原体を持つネズミが存在するところから流行が始まり、ペスト菌による肺炎患者から流行が拡大する傾向があるようです。ノミが人や他の動物を刺す条件は、ネズミが死んだために血を吸えなくなったノミが、近づいた動物や人に飛びついて刺し、病原菌を感染させるということから、ネズミを殺すことはかえって危険を増すと言うことになりかねません。 治療薬はありますが、予防接種については、腺ペストには多少効果があるようですが、肺炎については不明です。 | |
ネズミ発疹熱は、ネズミの多い地域では世界中に分布していて、ノミが媒介する点ではペストと同様です。突然高熱を出し、頭痛、筋肉痛、全身の痛みを訴えることが多く、インフルエンザ、その他のウイルス性感染に似た症状で始まりますが、発病した2日目から8日目に発疹が現れます。発疹の中央部が赤く見えることはありません。 この感染症は抗菌薬で治療できますが、治療ができない場合の死亡率は1%から2%と言われています。高齢者はこれより高いといわれます。予防接種はありません。 ネズミに関連する感染症の多くは予防接種で対応できないのでネズミ対策が重要です。 |
ネズミ対策
1)ネズミの家屋侵入を防ぐ
- 家の外壁にある穴をコンクリート、または金属板で塞ぐ
- 窓の網戸の隙間が0.7cm以上ある場合はこれを狭くする
- ドアー開閉後、必ず閉めたことを確認する
- 家の周囲約30から35m以内の草や短い立ち草を刈り取る
2) ネズミの食物や水を断つ
- 人の飲食物、ペットの食べ物や水は必ず蓋をする。その保存は金属製、または厚いプラスチックの容器に密封する
- 生ごみも金属または厚いプラスチックの縁のある容器に入れて家の中で保存する
- 食器皿や台所用具は使用後直に洗い、付着している食物を除去する
- 人の食料や動物の飼料も金属または厚いプラスチックの容器にいれておく
- ペットのエサや飲み水をペットの容器に放置せず残ったものをすぐに片付ける
3)ネズミを殺す (ペスト流行時を除き実施する)
- 数個のネズミ捕り器を家の周囲30から35m以内のネズミの出そうな場所に常にしかけて置く。家の中にも同様に仕掛けて置く
- 殺鼠剤(rodenticide)を含むエサを家の内外に置く。小児やペットがこれを食べないよう注意する。殺鼠剤(warfarin,sorexa)はエサに混ぜるとよく食べますが、注意点は以下のようです
- sorexa1に小麦粉またはトウモロコシ粉などネズミの好む食物の粉17に対し、砂糖2の割合で混ぜる
- ネズミのよく出る場所に、1回150g程度のsorexaを含むエサを置く。同時にエサの近くに水を入れた皿を置く
- エサを食べたあとがあれば、エサを補給する。ネズミは食物を食べるところを選びます。静かで逃げやすく、囲みのない場所で食べる傾向がありますので工夫を要します
Warfarinと同様の殺鼠剤としてはbrodifacoum,bromadiolone,chlorophacinoneなどです
いづれにしてもその使用法をよく読むことが大切です
殺したネズミの処理は特に注意して行う
殺したネズミは病原体を持っていると考え、以下の処置をします
- ゴムまたはプラスチックの腕の長い手袋をはめる
- ネズミの死体およびネズミ捕り器の内外にノミの殺虫剤を散布する。ノミはよく跳ねるので、周囲50cmは要警戒です
- ネズミの死体を、消毒液を入れたプラスチック製の袋に入れしっかり閉じて、50cm程度の深さの穴にガソリンをかけて埋めるか、または燃やす
- 手袋をはめたまま消毒液(または洗濯用の漂白液1に対し水9を加えた液)で手袋を洗い、手袋をとった後、手を石鹸でよく洗う
- ネズミ捕り器を消毒剤に30分つけた後、よく洗い、臭いをとる
ネズミのノミ対策は、ネズミの通る場所に粉末殺虫剤を使用し、ノミを殺すのが最善とされています
ペットにはペット用の首巻をつけ昆虫に刺されるのをふせぐ
死んだネズミには決して近づかないよう、小児には特に注意が必要です
ペスト菌をもつ野ネズミの常在地
WHO、CDCその他の資料をまとめたもの
2007年5月31日 |