転勤妻 灼熱印度
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サイト【転勤妻】 運営主宰者 大向 貴子

第10回 医療 新ビジネス

その昔、数字のゼロを発見したインド人。
紀元前のインダス文明で、すでに10進法に基づく計量を行っていたという。
理数系に強いというのはインド人の素養かもしれない。
近年IT産業の牽引役として注目されているが、優秀なのはIT分野だけではない。
医学分野でも、優秀な逸材を多数産出している。

デリーやチェンナイなどの大都市にある総合病院は、一流ホテルのような佇まいだ。
在籍する医師の多くが、欧米の一流大学で最先端の教育を受けてきている。
近代設備を整え、そこだけを見るとインドの病院とはにわかに信じられない。
もっともこれは、外国人や富裕層のみがかかれる高額な総合病院の話。
地方にある公立病院では、いまだに環境設備をはじめ医療水準は劣悪状態である。
公立病院では医療費がかからないため、貧困層の人たちで溢れかえっている。
医療器具や薬も足りない。
優秀な医師はどんどん都市部の病院に引き抜かれていくため、医師自体の数も不足している。
この不均衡な状態こそが、インド全体を表しているといってもいいかもしれない。

インドでは心臓手術をはじめとする、外科手術のレベルが非常に高い。
費用は自国で受ける何分の1かで治療を受けられる。
アメリカで1千万円以上かかるといわれていた心臓病患者が、インドでは数百万円で手術が受けられた話も紹介されていた。
リビングルームがあるスイートルームでの入院も、一泊わずか数万円という魅力は大きい。


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近代設備が整う総合病院
街の小さなクリニック


その評判は世界中に広がり、またたく間にビジネスとして成り立つようになった。
近年では、欧米からの医療ツアーが人気である。
英語が公用語のインドは、この点強い。
多少インド独特の訛りがあっても、英語が話せる外国人にとっては問題なく意思疎通がはかれる。
最大手の総合病院では外国人患者は年間4万人にも及ぶという。
その病院全体の患者の12%を占めるというから、病院にとっても大きな収入源になっていることは間違いない。
患者の出身国に合わせた食事の提供や空港への送迎、通訳の手配などのサービスも完備し売り込んでいる。
斡旋代理店も存在するため、手配が簡単ということも人気に拍車をかけている理由だろう。

政府観光省も積極的にこのビジネスをバックアップしている。
早速医療ビザ制度を導入し、患者とその付き添い人が治療のため1年間滞在でき、さらに3年を限度に延長できるようにした。
欧米人を対象としたこの新しいビジネスは、今後も活況の一途をたどるのだと思う。

医療が充実している日本では、まだまだインドへの医療ツアーというのは非現実的だ。
英語でコミュニケーションというのも、日本人にとっては大きな壁となる。
それでも近い将来、日本語の堪能なインド人医師も数多くいるような病院になる可能性は高い。
医療ツアーで日本人も大勢インドへやってくる、そんなインドの新しい時代もすぐそこまで来ているのかもしれない。

 

 


2007/7/17

つづく

 
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