海外へ渡航するまでに受けたい予防接種として、「2種類以上のワクチンの同時接種」をキャッチフレーズ として実施しているクリニックがあるようです。確かにワクチンの同時接種は、クリニックを訪問する回数を少なくし、出国前に受けるワクチンの接種期間を短縮する可能性があり、赴任者にとっても便利ですが、総てのワクチンが同時接種に使用できるという確証は現在のところありません。
その理由は、
●ワクチンの同時接種には2つの前提条件が必要です。
第一は、同時接種で得られる免疫が、各ワクチンを単独で接種して得られる免疫より低くてはならないということです。もし総合したものより、免疫が低ければ、同時接種の意味がなくなります。例えば「三種混合ワクチン」と「ポリオ生ワクチン」の同時接種を行った場合に得られる免疫は、両方のワクチンを単独で接種して得られる免疫と同じでなければなりません。この第一の条件をクリアーしたうえで、
第二の条件として、同時接種した結果起きる副作用が、個々のワクチンが起こす副作用(副反応)を加えたものより強くてはならないと言うことです。
以上2つの条件を目安として、
米国の予防接種実施勧告委員会(ACIP)では、各種ワクチンの同時接種についての免疫学的(第一条件)、および臨床学的(第二条件)検討を繰り返し、1996年9月6日発行の、MMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)
Up date :Vaccine Side Effects, Adverse Reactions, Contraindications,
and Precautions 2002年2月8日発行のMMWRに、 General Recommendations on Immunization
をだしており、現在までに同時接種できるワクチンとしては、B型肝炎、三種混合、ポリオ(OPV)、b型インフルエンザ菌(Hib)などを使用しております。
また現在、A型肝炎、肺炎球菌胞合ワクチン(PC7V)と、他のワクチンとの同時接種の可能性を検討しているようです。なお、狂犬病、日本脳炎、インフルエンザ(ウイルス)などについては、他のワクチンと同時に接種できるという、前述の第一条件もクリアーしておりません。
同時接種を含めて、ワクチンの接種は既に確立している方法に従うべきでしょう
|