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K-1やプライドの試合を見ていると、選手達の身体は不死身ではないかと思えるほど激しい闘いに耐えている。また、テレビゲームの激しい格闘を見たりすると生身の身体と架空の映像の違いが分からなくなる人もいるらしい。しかし、世界的な格闘家は、やはり特別な存在であり且つその鍛え方も特別である。一般の我々には考えられない資質の上に努力を重ねて成立した身体であり、また、一般の人はテレビゲームの中の格闘家とも違うのである。
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A氏(32才)は、就職して凡そ10年、夢中で仕事をこなして来たが、気が付くと5年近くもそばに居る恋人のB子さんの存在があった。過ぎし日々を振り帰ると、仕事がつらいときにも健康が優れないときにもB子さんがそばに居り、お蔭で乗り越えることができた。『もうそろそろ安心させて上げなくては・・・。』と思ったA氏は、会社の帰りにJ旅行社へ立ち寄った。ウェディングドレスの女性が表紙で微笑むパンフレットに惹かれて、これを来月のB子さんの誕生日プレゼントにすることに決めて申し込んだ。 ロサンゼルスでの挙式ツアーであった。
その帰りに赤と白のワインを買い、パンフレットと共に家で待つB子さんに「俺の気持ち!」と渡した。B子さんは、何も言わずウルウルと涙ぐみ小声で「ありがとう。」と言っただけであった。A氏は、あまり大したことではないかなと思ったが、B子さんはこんな嬉しいことはなかったという。
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(※写真は、本件事故のものではありません)
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現地で式を挙げ、その後の楽しい日々を過ごしていた5日目の昼過ぎ、A氏はプールサイドにB子さんを残して泳ぎにいった。暫くしてざわめきと人だかりに気づいたB子さんが近づき覗いてみると、A氏が倒れていた。「まさか! スポーツ万能の彼が・・・。」直ぐに救急車が来てA氏に付き添ったB子さんは暫く事態が飲み込めなかった。 |
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病院のICUで医師から発生状況と容態の説明があった。「プールに飛び込んだ際に、水深が浅かったためそこで前頭部を打ち、そのため頚椎に衝撃と圧迫が加わり第五頚椎に圧迫骨折を生じた。脊髄損傷が発生し、現時点で予後の程度は予測できないが身体機能に重い麻痺が残る恐れがある。」という。 |
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オプショナルツアーで観光中のA氏とB子さんの両親は、直ちに病院に駆けつけ、驚いて困惑するB子さんを支えた。A氏は、主治医と保険会社の緊急対応を行なう医師との検討結果を聞き、現地にて手術を受けることに同意した。術後、症状の安定を図ってから、パラメディック2名の付き添いを受け、10日後にチャーター機で日本の関西国際空港まで搬送された。空港から寝台車でN病院まで運ばれて入院、パラメディックは日本の主治医に医療経過を報告して救援活動を終了した。これら費用のうち日本までの搬送費用は約150,000ドルを要し、治療費は凡そ50,000ドルであった。
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海外で起きる脊髄損傷事故では、交通事故とプールの飛込みによるものが圧倒的に多い。首の骨は頭を支えることは出来ても衝撃に充分耐えられるほど強くはないのである。ホテルのプールは競泳用のプールと異なり、深さが充分でないものが多く、プールの周囲に「飛込み禁止」の看板はあるものの気が付かない場合が多い。海外のプールではどうか飛込まないで頂きたい。また、本件A氏の回復が進み、身体機能の麻痺がリハビリにより軽くなられることを担当者として心より祈る次第である。なお、本件では新しい特約『治療・救援者費用特約』がついていたため、チャーター機の使用を躊躇なく決めることができた。
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