香港では資材不足から、マンホールの蓋を盗むと1つ5HK$で売れるという。インターネットの香港INDEXの犯罪情報では、この盗難が’04年は19枚、’05年は35枚であったものが、’06年はもう881枚であると報じている。また、中国でいえば2004年瀋陽で起こった列車事故の原因はケーブルボックスが盗まれていたことであったと伝えている。
香港の西貢地区でも盗難が増加し、’05年1月から11月までの発生は月に12件であったものが12月は20日現在で14件となっている。 西貢地区に多く住む日本人の駐在員は特に、また観光で訪れるひともより一層に注意が必要であろう。本稿12月号で中国における誘拐の急増を紹介したことをご記憶の方もおられると思う。経済発展とともに経済格差が大きくなり、貧富の差が大きくなると社会不安は増大する。水は低きに流れるというが、こうなると治安維持も次第に難しくなるのは世の常である。犯罪は、犯罪行為を行おうとする意志のある者と適当なターゲット、及び実行に移せる環境とが整った場合に発生するといわれる。この犯罪増加の流れがいつ日本人に対して牙を剥くか、後は時間の問題と考えるべきであろう。
11月下旬の香港は最も過ごしやすい季節といえる。気温も20度前後で湿度も低く、また、雨も少ない。これまで香港では男性が夜一人で歩いても特に問題が起こることは無かった。その安全と思われていた香港で、社会変化の予兆と思われる強盗事件が発生した。
名古屋市から現地法人役員として単身赴任しているT氏は、油麻地(ヤウマティ)の男人街(テンプルストリート)で友人と海鮮料理の夕食を摂り、その後帰宅するため勝手知ったる路地を歩いていた。その時、横から飛び出してきた二人の男にいきなり切りつけられ 右手に負傷をしてクラッチバッグを落としてしまった。男達はバッグを拾い上げ逃走した。
T氏は痛みの割には右手拇指の付け根の出血が大きいことに驚いたが、示指以下の4指の切創は深手ではないようだった。警察を呼び、救急車で病院へ行ったところ救急対応の医師は、かなり深刻そうな顔をしている。自分では表皮が切れただけと思っていたがそうではないらしい。凶器は 極めて鋭利な刃物でカッターナイフであろうとのことであった。
T氏は犯人の刃物をよく見ることができなかったのでわからない。診察の結果、傷は筋膜と腱まで断裂するものであった。現地病院で筋膜と創の縫合を受けたが、そのままでは親指の機能を失う可能性もあるといわれたため、一旦帰国し 現在は手の専門医の元で治療を続けている。日本での治療費も当然海外旅行保険で支払われるが、それより『右手の親指が動かなくなったら大変!』と心配するT氏である。
香港ではスリの多いことを駐在員は皆承知していたが、いきなり斬りつけて鞄を奪う強盗などはこれまで聞いたことも無かった。しかし、次第に犯罪が多くなっていることは事実である。外務省の邦人援護統計の『事件・事故等援護件数の特徴と推移』でアジアの2004年度件数は対前年54.9%増である。 日本人は比較的狙われないといわれた時代から、誰もが個人レベルでのリスクマネージメントを必要とする時代に変ってきているのである。 |