特に近年渡航駐在されるひとの多くなった中国では、距離的に近いこともあり単身赴任が多い。衣食同源といわれる中華料理の国でも、バランスを欠いた食事に陥りやすい男性の一人暮らしの所為か、悪化した生活習慣病に影響された脳卒中や心臓疾患を原因とした緊急搬送が増加する傾向にある。
北京の現地法人総経理のT氏(55才)は、2月21日朝から役員会を開いていた。同席した日本人の役員によると、会議中いつもと異なり2度ほどスピーチが止まり、言葉が出てこないところがあり、おやっと思って見るとT氏が会議室のテーブルにバタッと突っ伏してしまった。直ぐにインターナショナルSOSクリニックのドクターカーを呼び、同クリニックに搬送した。緊急に行った検査の結果、病名は『脳出血』で予断を許さない状態であるという。脳幹部に近い部位での出血がみられ、呼吸中枢を圧迫する可能性もあるので人工呼吸機が装着された。その後、現地主治医とアシスタンス会社のメディカルダイレクター(医師)の協議の結果、安全度から日本で治療を行うこととなり、医療専用の小型チャーター機で搬送することになった。当日は、ドクターカーで空港まで運び、そのままストレッチャーで機内に運び込み、北京空港から成田まで直行した。成田からはA医科大学付属病院まで寝台車で静かに運び、入院した。
T氏の海外旅行保険の治療費用保険金額合計1千万円は、この段階で限度額支払いに達したが、以降は健康保険に切り替えて治療を継続している。万が一のときに、最も安全で、最も迅速に且つ適切な方法で日本に運ぶことがその後の結果を大きく変えることは、数多の事例が証明している。
現地の医療状況によっては より良い治療が可能なところへ緊急搬送を行うことが必要である。死亡保険金は兎も角として、治療費用保険金額に余裕さえあれば保険会社の対応担当者は自らの判断だけで最善の方法を取ることが出来る。治療費用保険金を大きく加入された本件も、ご家族の皆様にも喜んでいただけた理由がそこにあった事例である。 |