【Fami Mail】 海外旅行トラブルニュースNo.7
 
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 お守りが役立つ時 海外旅行保険
[目次]
癌は突然やってきた疾病治療費用担保特約条項
海外医療支援協会 酒井 悦嗣

   
   癌は突然やってきた 
   

  あるときは、大きな市場を求めて、また、あるときは海外の安価な労働力を求めて企業は海外へ進出する。 企業の発展を目指して各部門はその事業計画を定めて推進する。法人としての企業の発展と、それを支える駐在員との目標はひとつでも、個々の社員の健康管理までは、社員も企業も法定の義務を超えて十分な配慮ができているとは、必ずしも言い切れないのではないだろうか。
   上海のA電器有限公司は、有名な日本のA社の現地法人である。A社で課長であった鈴木氏(仮名)は、赴任の辞令を見て現地法人の『取締役』の肩書きがあることに驚くとともに嬉しくも思い、意を強くした。以来4年半、単身赴任で昼夜を問わず仕事に邁進し、その業績を大きく向上させてきた功労者の一人であった。8月のホームリーブでの帰国時には郷里で人間ドックを受け、高脂血症と脂肪肝のみで、それ以外の指摘は受けなかった。医師からは、お酒とココナツオイルを多用した料理を控えるようアドバイスを受けたのみであった。鈴木氏は、駐在員仲間の多くが同じ注意を受けていたので却って安心し、再び任地に戻った。
  10月のある月曜日の朝、鈴木氏は出勤したのであるが、ビルの同じフロアーの隣の日本企業に入っていき、「私の席がない!」と言ったのである。顔見知りのそこの社員たちは、鈴木氏の冗談かと思ったが、様子がおかしいことに気づいてA電子の副総経理の大田氏に知らせた。大田氏と秘書が来てみると、鈴木氏は呂律が回らず、会社に連れて行こうとして歩き出したときには足がもつれていた。大田氏は、『おかしい!』と思い、すぐに鈴木氏を上海浦東の診療所に連れていった。当初は脳梗塞を疑ったが、精密検査を要するとの判断で、総合病院でCTを撮った結果、脳腫瘍で開頭手術が必要と診断された。腫瘍が徐々に大きくなり、ある段階を越えて言語と歩行に支障を来した状態であった。
   ジェイアイ傷害火災保険では、インターナショナルSOSに対応を指示し、コーディネータードクターに判断を求めた結果、日本へ移送して手術を受けることが最も安全であるとの結論に至った。これに基づき、A電子の責任者と鈴木氏の奥様と打ち合わせの上、日本への緊急移送を開始した。付き添い医師の手配、航空会社への予約と鈴木氏の病状の打ち合わせをすると同時に日本の受け入れ医療機関の準備を行い、2日後、日本の航空会社の便帰国搬送した。
 保険会社としては、赴任地が医療の先進国の場合には現地での治療を基本に置くが、開発途上国では安全性の判断から、移動させると生命にかかわる場合はやむを得ず現地で救命処置を行うが、搬送が可能な場合にはよりよい治療を受けることが可能なところへ運ぶことを考える。本件の場合も脳外科手術は日本で受けるべきとの専門家の判断であった。日本に帰国後は、御茶ノ水のA大学付属病院に入院した。手術と治療を受けられた鈴木氏は、生命は取り留めたものの、やはり長く入院された模様である。
  他方、費用の点では、A電子は駐在員保険の保険金額を役職に准じて決めており、疾病治療費用保険金額は、本社の役員が治療費750万円、部長は500万円、課長は300万円であった。また、救援者費用は未加入であった。このため、鈴木氏の保険金額は、疾病治療費用300万円のみであった。上海から医師付き添いで東京まで運ぶ費用は128万円であり、現地の治療費26万円を加えると、残りは146万円であった。これでは日本の治療費の一部しか賄えなかったのは言うまでもない。保険会社としては、保険金額全額の300万円を支払って終了したが、鈴木氏のご家族と、会社のご担当者の心労を思うと同情に堪えない。(なお、保険金額の全額支払い後は、保険会社が病状を知ることはできない。)
  病気やケガは、社員の役職に応じて発生してはくれない。同じ病気・ケガをすれば費用は同じにかかるのである。死亡保険金額は役職に准ずる必要があるかも知れないが、実費を負担する保険金額は駐在員全員同じにすることが必要ではないだろうか。日本の就業規定は、健康保険や労災の効く環境では公平を維持できるのであろうが、それらの給付が充分にカバーできない外国での本件のような病気やケガの場合で、保険金額の不足が生じた場合お気の毒でならない。お客様の緊急対応を担当するものとして常に感ずるポイントである。

 


海外旅行傷害保険疾病治療費用担保特約条項


Quick Study !

ワンポイントレクチャー
<お支払いできる主な場合>
  • 責任期間中に発病した疾病
  • 責任期間終了後72時間以内に発病した疾病。ただし原因が責任期間中であり、72時間以内に医師の治療始したもの。
  • 責任期間中に感染した別表に掲げる伝染病を直接の原因として責任期間終了後30日以内に医師の治療を開始したもの。

なお、治療費用保険金では、治療費や入院雑費の他、緊急措置として被保険者を治療できる施設まで運ぶ緊急移送費も対象となります。また、救援者費用を同時にご加入の場合は、これを救援者で支払い、治療費用を本来の目的に全額使うことができます。
Q & A
Q::
発病日は、誰が決めるのですか?
A::

主治医の診断が基になります。

Q::
癌は、何年もかかって大きくなると聞いていますが?
A::
本人に自覚症状がなく、治療暦もないものを病気と認定することは問題があります。本件では、人間ドックでも発見されていません。なお、具体的な判断については、ご加入の保険会社にご紹介ください。




2005/2/15

つづく

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癌は突然やってきた疾病治療費用担保特約条項


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