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目覚しい科学技術の進歩の中で最近特に目につくのはロボットである。愛知万博でもより人間に近い動きをするロボットが活躍しているそうである。かつてサイボーグを扱う漫画があったが、人に近い機能・動作が可能になるのであれば産業用ロボットや介護ロボットだけではなく、ケガや病気で身体の機能に障害が残った人々の補完的な動きをするものについても開発が進むものと思われる。かつて『8マン』という題名のサイボーグ漫画では、脳だけが自然人のものでそれ以外は人造人間の、スーパーマンのような活躍をするものがあった。これが空想ではなく、現実となる日が来るのかもしれない。 |
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海外旅行傷害保険の後遺障害保険金請求原因の中で、比較的多いものに大腿骨々折による人工骨頭置換術がある。これは65歳以上の人が大腿骨々頭骨折をした場合に多く適用される。大腿骨と骨盤との関節にある部分の骨折であり、回復に長期間を要することがあり、予後が悪いと骨頭壊死の可能性もある。また、老齢の患者を長期間整復固定して寝かせておくことが筋力低下等を引き起こし、寝たきりになる等回復が難しくなる例があるため医師は、この手術の適用をすることが多い。海外旅行傷害保険約款が作られた当時は、人工骨頭の材質も医療技術も現在と異なり、この手術の適用を受けるとその股関節は動かなくなってしまった。そこで、人工骨頭への置換術を受けた人の関節機能をその時点で用廃とみなして、約款上、契約した後遺障害保険金額の35%を支払うことと定めた。その後医学の目覚しい進歩があり、現在ではこの手術を受けた人が2週間程度の安静入院の後歩行練習を始められるほどになっている。また、手術後の障害も極めて軽く、普通に歩行ができることは勿論、中にはゴルフをやる人もいるほどである。医療技術の進歩と人工骨頭そのものの材料、品質、精度、耐久性等全ての飛躍的な改善・向上がもたらした恩恵である。 |
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長年駐在員として米国に滞在し、冬はロッキーの山々でスキーを楽しんできたI氏(65歳)は、定年退職後もアメリカ・カナダのスキー場の醍醐味を忘れられず、年に一度ご夫妻で2週間ほどの予定で、旅行会社に企画と手配を依頼し渡航していた。今年は、1月20日よりカナダのウィスラーへ行き、スケールの大きさを楽しんでいた。仕事をやり遂げ、子育ても終了し、奥様と人生の最も幸せな時間を噛み締めていた1月31日、思いがけないことが発生した。二人でリフトに乗ろうとして奥様はスムーズにいったが I氏は、右スキー板の先が雪に引っかかり内側に捻るようになった。そしてリフトから落ちるように転んでしまった。I氏によるとその瞬間『バキッ!』と音がして骨盤に響いたという。すぐに係員が助け起こそうとしたが、I氏は痛みがひどく立ち上がることができない。このため救護隊が駆けつけ、骨折の可能性があるとして救急車で麓の病院に運んだ。そこで、大腿骨々頭骨折の診断を受け、人工骨頭置換術が適用された。I氏の生命には別状ないケガのため、ご夫妻は極めて落ち着いておられた。手術は成功し、2週間後に歩行練習が可能となり、パラメディック(救命看護師)が付き添いの上帰国し, 都内の病院でリハビリを受けている。 |
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後日、自宅に保険会社から支払いの通知が来たI氏は、我が目を疑った。後遺障害保険金が2,450万円と書かれていた。I氏は、死亡・後遺障害保険金額7,000万円、治療救援者費用無制限の内容で保険に加入していた。このため後遺障害保険金額の35%が支払われたのである。歩行にはほとんど支障ないが、後遺障害として認定された。これも医学の進歩の恩恵と考え、天に感謝したそうである。現地医療費や日本までの移送費用は、立替なしで保険会社により直接支払われたが、国内の治療費や入院費用も事故から180日以内のものは全て支払われる。
また、旅行会社の企画手配旅行であったため、旅行会社からも後遺障害の特別補償として2000万円の35%、700万円が支払われると説明を受け、2度びっくりしたI氏であった。
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