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連 載 「暮らしの中のニセ物考」-2

◆  三 羽 が ら す ◆

 偽ブランドの取材にかかわって20年を超えますが、講演やセミナーの講師を頼まれてよく出る質問が「どのブランドが一番、ニセモノが多いか」です。

 ニセモノにも時代性があり、変化はあるものの、数十年間、不動の偽ブランドとなると、歴史と伝統、人気からルイ・ヴィトン、シャネル(ともにフランス原産)とロレックス(スイス)の三種に尽きます。私は俗にこれらを偽ブランド三羽がらすと呼んでいます。
 LとV、CとCを重ねたり、片手を広げた様な単純な商標が特徴で、世界的に人気が高い商品として知られているだけに、ニセモノも売れるわけです。ルイ・ヴィトンと、シャネルはバッグ類や装身具、衣料品を中心に、人気のある商品のほとんどにニセモノがあるといえます。なかでも、ルイ・ヴィトンは日本人が世界で一番大好きなブランドとあって、「類似ヴィトン」があまりに目立ちます。ロレックスは高級時計の代名詞とあって、ニセモノ時計の世界では「目玉商品」ともなっています。

 ニセモノの歴史は、人類が物を作りだした頃にさかのぼるとさえ言われます。16世紀の神聖ローマ帝国では、シャルル5世の命令で他人の商標をまねたり、変更を加えたり、はがしたりいした者は両手首切断という刑にしたり、ガリー船で労働させたりしたのです。つまり、他人の開発した商標の侵害行為は贋金(にせがね)づくりと同罪だったのです。
 工業の技術革新が進み、大量生産時代になると、刑罰は懲役もしくは罰金にかわりました。
 

世界で有名商標を数多くもっている国は、フランス、イギリス、イタリー、ドイツ、スイス、スペインなど、欧州にめだっています。
 ところで、欧州では昔から社会的な階層によって国民が持つブランドがほぼ決まっています。およそ、高校生とか大学生がルイ・ヴィトンとか、エルメスのような商品を持つ事はありません。有名ブランドは社会的な地位のシンボルとしての意味があるのです。
 これにび対し、国民の9割が中流階層である日本の場合、欧州の王侯貴族や特権階級が愛用しているブランド品をいとも簡単に買い、身につけるなど、消費構造に大きな差があるのです。
 日本人のブランド指向は、金にまかせて好きなブランド品を買いあさる「一点豪華主義」で、ブランドだけが一人歩きしているところが見受けられます。
 いささか滑稽なブランド指向を逆手にとって、悪質な業者による東南アジア製の偽ブランド品が後を絶ちません。見栄えのいいカタログを使っての通信販売、インターネット販売などは商品を手で触れないため注意が必要で最もだまされやすいのです。盛り場での街頭販売、ホテル展示場での特別セール、「並行輸入」の名を借りた詐欺的な販売など落とし穴はいたるところにあります。
 これらの商品は、買ったところで保証書もなく、商標名の入った領収書ももらえず、修理も断られることを知っておく必要があります。 (明)

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(c) Mei Sasaki, 2001