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西ナイル熱>1―鳥の死体は流行の前ぶれ?"カに刺されない工夫"が予防の基本

1999年、ニューヨークでカラスやハトの死体から西ナイル熱の病原ウイルス(WNFV)が発見され、このウイルスによって死んだカラスや他の鳥類の死体、または"ふるえや びっこ"などの神経障害を示すウマ、その他の家畜などからもWNFVが発見された地域は、ニューヨークの北方および南方、メキシコ湾に面するフロリダ、ジョージアなどの各州に広まり、2000年には、米国中西部より東側の各州でも鳥類や他の動物などからWNFVが発見され、このウイルスが広範囲に広がっていることが明らかになってきました。 このウイルスに最初に感染した人は、2001年の7月に、フロリダ州で脳炎症状を示した73歳の高齢者と報告されています。それ以降、脳炎や髄膜炎の症状を示す感染者が続きました。 このような流行の状態から米国CDCはWNFVについてのサーベイランスを、それまでの中西部より東26州から、米国本土全州をカバーすることを2001年のなかばに決定したようです。しかし9月11日の"ニューヨークの同時多発テロ"それに続いた"炭疽菌事件"などの影響のためか、WNFVに関するCDCサーベイランスの報告は、2002年になってから定期的にでるようになりました。

それを総合すると;
2002年1月から11月末までのWNFVの感染者総数は3、737名、そのうち死亡者は214名となっており死亡率は5.7%です。この間7,522羽のカラス、それ以外の鳥の数は5,730羽、922匹の神経症状を示したウマや家畜、その他の動物からWNFVが検出されています。2002年9月になるとWNFVの感染者は米本土の北隣のカナダ南部で発見され、57名の感染者と2名の死亡者が11月末までに保健当局から報告されています。死亡率は約4%です。 以上簡単に述べた北米大陸でのWNFの流行は、この病原ウイルスが"渡り鳥"によって新しい地域に持ち込まれ易いと言われていることから、日本でも流行の起きる可能性が指摘され、近頃マスコミに取り上げられ報道されています。 この病気の「病原ウイルス」、「感染者の示す症状」「診断法」「治療法」「ウイルスの感染経路」「予防法」などを簡単に整理して述べてみたいと思います。


● WNFの病原ウイルス
WNFVは"Flavivirus"とよぶウイルスのグループに属し、このグループには、「デング熱」 「日本脳炎」「ダニ脳炎」「黄熱」などの病原ウイルスが含まれます。
これらの病気は何れも似た症状を示すので、症状から診断することは困難であり患者から血液を採取し、検査確認しなければなりません。しかし、上述の病原ウイルスは、いずれもカやダニのような昆虫により動物や人に媒介される点では共通しております。 WNFVの遺伝学的性状は、この病気の流行地によって多少づつ違うと言われています。その差が病気の症状や免疫体をつくるうえでの影響についてはデータがないようです。


● ウイルス感染者の示す症状

感染者は、ウイルスが体内で増加しているにもかかわらず症状を現さない場合が多いと言われています。しかしこのような"無症状感染者"もカやダニによってウイルスを他の人に媒介するおそれがあるばかりでなく、輸血や臓器移植の提供者になればウイルスを感染させる可能性を指摘されております。 感染者が症状を示す場合は、突然38℃から40℃の発熱、前頭部の頭痛、吐き気、光が眩しい、結膜の充血、顔があかく見える、筋肉痛、関節痛、腹痛、全身のリンパ腺が腫れて、硬いなどです。その後、体の上半部(胸、背中、上肢)に斑点状の発疹をみることもあります。通常、発熱は4日から6日で急に下がり完全に回復し、後遺症を残しませんが、発熱が続くと、嘔吐、けいれん、意識の混濁、頸部の硬直、稀には四肢の運動麻痺(ただし知覚麻痺はない)など、小児麻痺に似た症状を示すこともあるようです。このような神経症状を示すのは高齢者に多いと言われています。2002年の米国の統計では、小児は感染例が少ないためか重症例は認められていないようです。 2002年1月から11月までの米国CDCの報告によると感染者は、生後1.5カ月の乳児から99歳に及んでいます。死亡した患者は約6%、死亡患者の年齢は26歳から99歳におよびその半数は75歳以上となっています。このことは、WNFは高齢者にとって危険な感染症であることを証明しています。WNF感染者および死亡者の性別統計は男性が僅かに女性より多くなっていますが、男性が女性より感染しやすいと結論するためには患者についての日常の生活環境、仕事の種類、経済、教育、趣味などの分析が必要で、これらにつては後にCDCが報告するものと考えます。

● WNFV感染者の治療
WNFVに感染した人の治療に有効な"抗ウイルス薬"は現在のところ知られていないようです。患者の治療は、症状に応じた"対症療法"で、患者の生命を守ることに専念します。

● WNFV感染の確認診断
感染症の診断の目的は;
1 病原体を確認し
2 確認された病原体に有効な"抗微生物薬"(Anti-microbials)を患者に与えて回復を早めるようにすること
3 病原体の種類によっては他の健康な人や、他の地域に感染が拡大することを防ぐ手段をとるなど
3つの対応を必要としますが、前に述べたようにWNFVの感染に対して有効な"抗ウイルス薬"は現在判っていないので、WNFV感染の診断の目的は、上述した3の"感染拡大を防ぐ" ために重要です。

●確認診断法
患者の血液を採取して幼弱20日ネズミの脳内や腹空内に注射、またはいろいろな動物の腎臓の組織培養に接種してWNFVを増殖させて調べる方法と、患者の血液を発病後6日以内に採取して免疫抗体を調べる方法があります。これらの検査法は一定の資材と検査技術の経験を必要とします。

 



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