【Fami Mail】 特別寄稿連載  
 
ケンブリッジ大学留学記
英語嫌いのケンブリッジ留学
*目次* *写真集*
ケンブリッジ大学Engineering Department
Master of Scienceコース
「STOOP」
著者HP>1,2,3でTOEFL脱出イギリス行
 第五回 日本人ってさ...

 前回お話したように、今回もエピソードを中心にお話しさせていただこうかと思います。前回は、イギリスで経験したカルチャーショックということだったので、今回は、逆に、日本人がよく聞かれることについて書いてみました。少し、内容が前回までと重なってしまいますが、御容赦下さい。

■英語ができないよね?  

 ケンブリッジに到着して、はじめて研究室のティータイムに参加したとき、それはそれは困りました。他のメンバーが話している内容がわからなかったからです。

 インド人の女の子には、「あなたはもうちょっと英語を勉強した方がいいわね!」なんて言われる始末。インド人は、結構、ズケズケものを言う印象がありますが、いかがでしょう?ちなみに、この女性も決してカンジが悪いわけじゃなく、ただ「はっきりと」モノを言うタイプなだけで、自分としては、言ってもらっただけ逆に気が楽でした。

 自分の話はさておき、日本人が英語が出来ないという話はよく出ます。大抵、二通りのパターンです。

 一つは、共同で研究しているようなアカデミックな分野に身を置く人ですら話せないのはなぜ?、というパターン。もう一つは、学会やビジネスミーティングなどで日本を訪れたけど、街中でまったく英語が通じなかったよ、というパターンです。

 日本の技術は優れているので、学会やビジネスミーティングが日本でも比較的頻繁に行われがちであり、余計に英語の出来なさが目立つというのもありますが、まぁかなりこの手の話が出ます。

 これを言われたら、第二回でお話したような英語と日本語の差を話したり、日本の英語教育の問題点を話したりして、会話が弾むので、自分としては、この話は大歓迎です。そのせいか、この話については、やたら流暢に英語が話せるようになりました。それ以外は、ダメですけど。

 英語教育については言いたいことだらけですが、小学生から行うというのには大賛成です。毎日1授業、歌でもいいので毎日英語を聴く、授業中は英語で会話、といった具合に、細かい指導要綱などを考えるより、これらだけで、将来の英語力が大きく変わってくると思います。少子化を逆手にとって、先生と距離の近い授業ができれば尚更ですよね。先生が英語を普通に話せることが必須ですが、一朝一夕にそれだけ多くの先生を用意するのが無理なら、サテライト授業でもいいんじゃないかと思います。

■写真が好きだよね?

 昔から、日本人は写真を撮るのが好きだと言われている、と聞いてきましたが、本当に外国の人からそう思われているかどうかは半信半疑でした。しかし、こちらへ来てから、何度か指摘を受けたので、どうやら本当にそう思われているようです。

 これにはずっと反論したい気持ちと反論できる証拠がありました。

 なぜ反論したいのかというと、どちらかといえば、奇妙な習性のように言われるキライがあるからです。さらに反証として、北欧を旅行したときにとりわけ強く感じたのですが、どこの国の人も写真を撮りまくっているという事実があります。特にイタリア人!しかも、観光名所でもない道端の変なオブジェや、何の変哲もない花などを撮ったりなんかしています。日本人ってのは、単に写真を撮るときの仕草(わかりますよね?)が目立つんじゃないの?なんて、思っていました。

 ところが、ケンブリッジのキングスカレッジのような観光名所付近でショッピングなどをしていると、日本人よりも中国人の方が、例の仕草で写真を撮っているような印象を受けます。

 というわけで、先日「日本人はデッドラインが好きだよね」との指摘をしてきたイスラエル人に「日本人は写真が好きだよね」って言われたときには、ここぞとばかりに反論、反証したのですが、議論好きのイスラエル人から、さらに反論をいただく羽目になりました。彼によると、こういうことだそうです。

 「いいか浩一郎、違うんだよ。旅行の時は、日本人に限らず、誰だって写真を撮る。おれだってカメラは大好きだ。しかし、だ。日本人は、ビジネスの時でも、写真を撮るんだよ。この前、君のボスが来たときも、入口のところで並んで撮っていただろ。これまで研究室に来た日本人全員、入口で並んで写真を撮っているんだよ。おれの家の近くにもスバルがあって、そこによく日本人ビジネスマンが来るんだけど、やたら写真を撮るんだよ。わかった?」

 ちなみにイスラエルではスバル車(現地ではスバロに近い発音らしいですが)がトヨタやニッサンよりもメジャーらしいです。アラブ・ボイコットが影響しているそうです。

 さて、余談はさておき、なるほど、写真好きと思われる理由の一つには、旅行以外でも写真を撮る、ってのがあるんですね。

 こう考えてくると、日本人は観光名所でなんであれ、訪れた場所を必ずもらさず記録に残すことを大事にし、他の大多数の外国人は、観光名所はもちろんですが、各自が気になったモノを写す、という傾向があるような気がしてきました。

 ノルウェーのベルゲンという街でマンホールを撮っていた欧州人がいたので、よく見てみると、その街の観光名所をあしらったデザインになっていて、そんな話も、こういう考え方の違いがあれば頷けるなぁといえるのではないでしょうか?


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■日本人の友達がいるよ!ケイコっていうんだけど...

 ケンブリッジは国際色豊かなので、はじめて会う人と話をするときは、必ず「どこの国の出身?」という質問をお互いにします。自分の住むフラットも様変わりし、右隣はオーストラリア人からパレスチナ人に、左隣はイラン人からカナダ人になりました。

 ところが、です。決まって言われるのが、「あっ、日本人の友達いるよ。XXXっていうんだけど。」というセリフです。「おいおい、知るわけないでしょ。日本人は一億人以上いるんだよ。だいたいXXXなんて下の名前じゃわからないよ。せめて苗字を言いなさい。」とは言えませんが、心の中はそんなカンジです。

 それが、です。ポルトガルのマデイラ島で国際学会があったときに、お互い一人で来ていたことも手伝い、イラン人の研究者と話す機会があったのですが、そのときに、自分が言われたら苦笑するくせに、恥ずかしげもなく、「あっ、イラン?大学にいたとき、自分の研究室に、ハサンっていう人いたよ。」と言ったところ、なんと「あっ、知ってるよ!」との答え。

 もちろん、非常に似通った研究分野の間で、という狭い領域ゆえってのはあるのですが、外国人が、知っている日本人の名前を言いたくなるのも少しわかるような気がしました。

 しかも、現在同じ研究室にいるイラン人にも、懲りずに「あっ、イラン?大学にいたとき、自分の研究室に、ハサンっていう人いたよ。」と言ったところ、これまた「あっ、知ってるよ!」との答え。う〜ん、「ハサン」恐るべし。

■ハードワーカーだよね?

 最も日本人について言われるのは、このセリフじゃないでしょうか?「何時から何時まで働くの?」という質問です。「8時半から夜9時とかぐらいかなぁ?」と答えると、「クレージー」「やっぱりハードワーカーだよね」という返し。

 何回か、そのやりとりを繰り返しているうちに、日本人の仕事に関する事情を正確に知らせていない気がしてきました。時間だけいえば、ハードワークに感じるかもしれないけど、やっている本人は、そこまで一心不乱にやっているわけじゃないよ、と。このままだと、家庭や楽しみを犠牲にして、仕事をひたすらやっている理解不能な国民、という烙印を押されかねません。というよりむしろ、すでに押されているのを再確認させている状況といえるでしょう。

 このままではいけない。そこで、反論しようとして、「いやいや、そう言いながらも、ずっと一心不乱に仕事しているわけじゃないよ。ご飯をみんなで食べに行って、そうそう、たまには飲んだりして、その後で仕事に戻ることもあれば、ちょっと会社のファシリティを拝借して仕事以外のことをしてたりとかするんだよ。」と言ったところ、「クレージー。早く家に帰ろうよ。」というセリフが返ってきて、なんとも墓穴を掘る始末。

 最近では、こういうことにしています。「日本人は好奇心が旺盛。そして完璧さを追求するのが好き。だから、どうしても仕事途中で他の発想が出てきてそれを試してみたくなったり、少しのミスでもあれば最初からやり直したくなるので、どうしても遅くなってしまう。だから日本製品って、質が高いでしょ?」

■日本に行くんだけど電化製品安く買える?

 外国人が好きなのは、お台場でも六本木でもなく、秋葉原。こんなセリフを何度か聞いたことありますが、確かに、外国人も電化製品は大好き。秋葉原の名前こそ、そこまでメジャーではありませんが、日本に行けば電化製品を安く買えるんじゃないかと、皆が思っているようです。

 しかし、普通に買ってしまうと、電圧の差があるわけで、アダプタなどをイギリス向けに変えなくてはなりません。そうなると、より高くついてしまうことになり、最初から海外向け(240V仕様)の製品を買わないことには、何のメリットもなくなってしまいます。しかし、そういったショップの知識は自分にはなく、いつも「ごめん。安く買えると思うけど、自分は知らないんだ。」と謝っている状況です。

 先日も、イギリス人の教授に同じことを聞かれたので、ちょうど近くにマレーシアと香港の学生がいたので、「マレーシアとか香港の方が、イギリス向けの製品が安く売っているんじゃないですか?」と、何の根拠もなく、無責任に答えたところ、こんな展開になりました。

 まずは、教授。「いやいや、マレーシアや香港でも買いにいったんだけどね。巨大なビル内に、ウサギ小屋みたいに狭い店が無数に入っていて、何がどこにあるのかワケがわからないんだよ。だからもう疲れちゃって、ある店でUSBメモリを買ったら、なんと向かいの店で同じ製品が半額で売られているじゃない!あれはワケがわからん。本当に厄介で、愚かしいことだよ。」

 次いで、マレーシアの学生。「それ以上、批判しないように。教授、それがショッピングっていうもんなんです。色々な店を見て、一番安いのを見つける。それが醍醐味じゃないですか。それを楽しめない人が来る場所じゃないんです。」

 とまぁ、意外な展開に。それ以降も、フレンドリーながらも、ショッピング議論が続いてしまいました。

 しかし、マレーシアの学生の肩を持つわけじゃないですが、イギリスでも、同じスーパーマーケット内で、同じブランドの、ほぼ同じサイズのミネラルウォーターが、単位容積あたり違う値段で売られているんです。しっかりチェックしないと、2倍ぐらいの違いがある場合だってあります。とはいえ、体格のいいその教授にとっての問題は、値段よりもむしろ店の狭さにあったのかもしれないですけど。

■寿司すきだよ!

 最後に、このセリフをあげておきましょう。「寿司、好きだよ!」

 はい、わかりました。いいですか、外国人のみなさん、日本人は寿司を毎日なんか食べません。天ぷらだってそうです。テリヤキは料理の名前ではありません。日本食は、日本風にアレンジした洋食や中華などを含め、バラエティさと味わいに富んだ、世界最高の食事です。イタリア人のみなさん、あなたがパスタ好きだよ、と言われるのと同じ気持ちです。

 あぁ、アジの開きが食べたい!

2004年11月15日

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つづく

著者HP>1,2,3でTOEFL脱出イギリス行


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