【Fami Mail】 特別寄稿連載  
 
ケンブリッジ大学留学記
英語嫌いのケンブリッジ留学
*目次* *写真集*
ケンブリッジ大学Engineering Department
Master of Scienceコース
「STOOP」
著者HP>1,2,3でTOEFL脱出イギリス行
 第八回 家族を通じてのエトセトラ

 ちょうどバレンタインデーが過ぎたところです。前回に紹介したガイフォークスデイ同様、これまた聖バレンタインが処刑された日だそうで、なんでも方針に逆らって結婚したことが原因だとか。

 外国ではチョコレートを渡すわけではなく、手紙やちょっとした贈り物をする、なんて聞いていたのですが、日本ほどではないにしろ、チョコレートもメジャーな贈り物のようで、店頭にはおしゃれなチョコが並んでいました。

 さて、第一回で、家族を通して感じたことなどを書いていきたいと言ったものの、これまでさほど触れてこなかったかと思うので、今回は少し家族を通して仕入れたネタについて書いてみようかと思います。

■パーティー慣れ

 子供を幼稚園(こちらではNursery Schoolとか、Pre-schoolとか呼ばれることが多い)に通わせていると、必ず経験するのが誕生日パーティーです。

 「いっちょまえ」に招待状なんかが配られ、ちゃんと参加か不参加かの返事をしなければならず、そして参加するからにはちゃんとプレゼントも用意しなければいけません。極めつけは、帰るときに渡される、パーティーバッグと呼ばれる「お返し」です。なかなか本格的です。

 お誕生日パーティーでは、日本と同様に(というか逆ですが)、普通に遊んだり、お食事したり、バースデーケーキのろうそくをふーっと消したり、とかやるのですが、ちょっと違うなぁと思うのは、やたらとゲームをしたり、ダンシングタイムっぽいものがあるところです。

 ある友人のお子さんは、ケンブリッジで小学校に通っているのですが、定期的に「ディスコ」が開かれるそうです。そして、西欧の子は、習っていなくとも「踊れる」つまり「格好になっている」そうです。なんだか日本でディスコというと、大学生以上にとっての場で、それも必ずしも一般的ではない(行く人が行くところ)代物だと思いますが、こちらでは少し受け取られ方が違うようです。

 かつて、ある上司が、「国際的に活躍したかったら英語もいいけどダンスをやれ!」なんて言っていて、「はいはい」と皆で茶化していましたが、その通りなのかもしれません。国際学会などに参加して、バンケットなどで西欧の教授が奥様と踊っていたりするのを見ると、小さい頃から根付いた文化の差だねぇ、と思わされます。アジアでの学会ではカラオケなんかやっていたりしますし。パーティーにダンス、こちらでは、どちらも日常の範囲内のイベントという気がします。

■イギリスでの縁起

 パーティーをよくするぐらいは知っていても(というかフォーマルからカジュアルな飲み会まで、全部パーティーって呼ぶだけですが)、イギリス文化についても知らないことだらけの連続です。

 妻は今、フリーの英語教室に通っているのですが、そこでは英語の授業の中で、色々な英国文化についても教えてくれるそうです。ケンブリッジに住んでいる女性が働けるようにするため、カウンシルが英語のみならずパソコンなどの教室を無料で提供してくれているのですが、その目的ゆえか、英国の日常生活事情を話してくれるそうです。

 こういったサービスをはじめ、寄付(ドネーション)をはじめとした社会福祉のシステムは、根付いているし充実もしている気がします。テスコなどの大型スーパーに買物に行くと、毎回とはいわないまでも、かなりの確率で、なんらかのドネーションのキャンペーンが行われています。ただ、お金の入った箱を、これ見よがしにジャラジャラ鳴らしているのは、日本人的には美しくないと思ってしまう光景です。

 ちなみに、以前にお話した韓国人の子供が、イギリス人の子供に引っ掻かれたというエピソードも、この英語教室付属の託児所(creche)で起きた話です。

 さて、先日は、「縁起」「迷信」の話だったそうです。日本でいえば、4や9はアンラッキーナンバーだとか、夜爪を切るのは良くないとか、お箸を突き刺すのは行儀が悪いとか、そんな話です。

 やはりアジア同士だと共通する迷信も多いらしく、香港でも4は同じく死を意味するので縁起が悪いそうです。8も同じくラッキーナンバーらしいのですが、理由は末広がりではなく、発音が「発達」を意味する漢字と同じになるから、だそうです(ちょっと記憶が不確かだそうです。ちゃんと調べてくださいね。)。

 ちなみにイギリスでは、「梯子の下をくぐると縁起が悪い」とか「傘を家の中で広げると良くない」なんてのがあるそうです。アジア人は、こぞって、雨の日は帰宅したら傘を広げて乾かすと主張していたそうです。気候ってのもあるんでしょうけど、面白いですね。

■お手伝いさん

 その英語教室に来ている人の構成を見てみると、東アジア人と欧州人に大別され、それ以外の人はあまり多くないそうです。英語が公用語になっている国からの流入者(という言葉が適当かどうかはわかりませんが)も多いので、英語に関して問題があるとなると、東アジアおよび他の欧州言語が主要言語となっている国となるのかもしれません。

 さらに、欧州人の中でも東欧(たとえばスロバキアなど)の若い女性が多いのですが、皆、EU加盟を機にビザなし渡航が可能になったことを受けて、イギリスへ語学留学のために来ているのだそうです。

 彼女たちは決して自国で苦しい暮らしをしているわけではなく(つまり外貨稼ぎという理由ではない)、将来のために英語を習得するために来ているのですが、さすがに高価な学校に通うほどの余裕はないため、働きながら勉強をしているというわけです。

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 こういう女性の働き口は主に、ベビーシッターです。子供をNursery Schoolに送り迎えをしていると、たまに「こんなに若いお母さんがいるんだ」とびっくりしていたのは、実は、こういったオーペア(aupair)という女性だったというわけです。

 ちなみにイギリスに住んでいてNHSという保険制度に加盟していれば、出産はタダなので、意外と子沢山の家も多いと聞きます。さほど裕福でなくとも家が大きい家庭が多くあるのも、理由の一つでしょう。

■続・お手伝いさん

 ベビーシッターという概念は、日本ではいまださほどcommonではないですが、こちらでは普通の話です。

 誕生日会などでお邪魔しても、少し大きなお家だと、必ずといっていいほどお手伝いさんがいます。それは東欧の若い女性だったり、年配の女性だったりしますが、ベビーのお世話係という意味では、家族を呼び寄せる家も少なくありません。

 先日も、メキシコ人の家庭におじゃましたのですが、そこには旦那さんの妹がわざわざメキシコからやってきていました。しかもすでに1年ぐらいは滞在しています。妻も仕事をしているし、誰か面倒を見る人が必要だというわけですが、日本人にはピンときません。

 これは、中国の家庭でもよく見受けることができます。問題なのは、中国から来ている両親(つまり祖父母)の中には、全く英語ができない人が、かなりいるということです。

 フラットの中庭などで、そういう方から声をかけられると(中国人と間違えられるため)、どう返していいのかわかりません。言語が通じないってのは、本当に「途方に暮れる」という表現が適切だと思います。

 その後、李君や趙君に「私は日本人です」という表現を教えてもらったのは他でもありません。

■メジャーな日本製品、マイナーな日本文化

 少ないながらも子供がいると、同じ世代の子供がいる家とは、自然と交流ができ、たまに遊びに行ったり、あるいは逆に家に呼んだりするようになります。そして、日本のどこから来たのと聞かれて「川崎」と言うと、決まって「あっ、バイクのメーカーであるよね?」と聞き返されます。で、川崎ってどこにあるの?と聞かれ「東京と横浜の間」というと、これは必ずではないですが「あっ、タイヤメーカーと一緒だよね」という返しがきます。

 野球はマイナーな欧州で、イチローや松井の認知度を確かめるべく、「イチロースズキって聞いてわかる?」と聞くと「スズキって車のメーカーであるよね」、「マツイは?」と聞くと「電気製品であるよね」と返しがきます。なんとマツイというブランドがイギリスであるのです。マツイというからには日本製品かと思いきや、噂によると、こちらで有名な大型量販店のディクソンズが日本ブランドのイメージの良さに目をつけ、自社ブランド名を「マツイ」にしたとか。本当かな?でも、とにかくマツイという格安ブランドがあるのです。

 マツイの場合は特殊ですが、とにかく自動車と電化製品に関する日本製品の認知度と流通度は異常なほどで、日本というと決まってその話が出ます。しかし、これだけ製品が認知されているにもかかわらず、日本という国そのものに関する理解度は意外に低いような気がします。

 日本はクリスチャンが一番多いの?なんて質問はかわいいもので、極めつけはお隣のイラン人(今はオーストラリア人になってしまいましたが)のママの「日本は海に面しているの?」という質問でした。

 妻が島国だと答えると、「えっ、じゃぁ、イギリスと同じじゃない!」と、すごいことを発見したかのような顔をしたそうです。このママは、旦那がケンブリッジ大学で研究をしているのはもちろんのこと、本人もイランでは数学を教えているような、いわゆるアカデミックな環境に身を置く人です。その人ですら、これなんですから、いかに日本製品の認知度が先走っているか?というのが想像できるかと思います。

 ちなみに、今まで100%の確率で驚かれる話は「日本人はタコを生で食べるんだよ」というセリフです。刺身を食べる習慣は知っていても、これは衝撃がかなりあるようです。

■中東から北アフリカ

 お隣がイランからの家族だったこともあり、芋蔓式というのか、イランの御家族とお話をする機会が結構ありました。そして、どのお家の子供(男の子)も、すさまじく腕白なことに驚くされることが多々ありました。遊び方が激しいというのか、砂をドバーッとかけたり、思いっきり体当たりしたりとか、日本人的には「えっ大丈夫なの?」と思うような場面が結構あるのですが、両親が涼しい顔をしていたりするので、あっ、これは何も特別なことじゃないんだ、とそのたびごとに理解していました。

 面白いことに、同じようなことが、年末年始にかけて旅行したチュニジアでも経験しました。ひょんなことから、ツアコンのおじさんと仲良くなり、その人の家まで遊びに行かせてもらったのですが、その家の7歳になる双子の男の子が、イランの子と同じようにすごく腕白に遊ぶのです。でも決して女の子、特に会ったばかりの子には、同じようなことをすることはありません。もちろん、こういうのは個人差や、同じ国の中でも、世代や地域による差などはあるでしょうが、少ない情報からだと、そういう印象を受けました。

 共通するのは、そればかりではありません。イランの人達もチュニジアの人達も、本当にホスピタリティの塊というか、すごく親切で、特に子供には過剰ともいえるぐらい愛想をするのです。子供たちも、そういった親の姿勢を見ているのか、自分より小さい子供の世話を本当によく見るので、優しいなぁと感心することしきりでした。

 日本人にとっては、なじみが薄いかもしれませんが、チュニジアとモロッコは欧州の人にとっての避寒地として、非常にメジャーです。年が明けた直後に、周りのイギリス人にヒアリングしたところ、年末年始には行った避寒地は、この2国をはじめとして、その他、マデイラ島、マルタ島、カナリア諸島などでした。日本人にとっては、馴染みの薄い場所が多いかもしれませんが、チュニジアでは結構多くの日本人観光客に出会いました。とはいえ、ポピュラーな地域ではないと思いますので、少しだけ写真を紹介します。チュニジアの雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

2005年2月15日

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つづく

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