【Fami Mail】 特別寄稿連載  
 
『噛めば噛むほどYale − 胸の高さで見た景色』
〜目次〜 イェール大学留学記
*題名について
Yale University(イェール大学)林学及び環境学スクール
環境科学修士&開発経済学修士
大司 雄介
<第1回>Yale University(イェール大学)、ニューヘブン
 政治の世界でも、ビジネスの世界でも、「環境」「環境」と声高に叫ばれる時代になりました。
そういう潮流を良いことだとは思いながらも、そうした流れに???を感じている人はいないでしょうか?
「ゴミを分別すれば地球環境問題は解決するの?」
「日本が二酸化炭素を6%削減すれば、地球温暖化は解決するの?」
そもそも「世界の発展と、地球環境の保全は両立するの?」
最初二つの疑問に対する答えは、おそらくノーでしょう。
でも、最後の疑問に対する答えは、イエスだと思います。
少なくとも、そう信じて、遠きアメリカの地で勉強している物好きがいます。

 今月から始まる連載では、こんな物好きの、アメリカでの生活について紹介します。
 僕が現在、在籍しているのはYale(イェール)大学の修士課程です。School of Forestry and Environmental Studies(林学及び環境学スクール:FES)に在籍し、2004年12月に環境科学修士を授与される『予定』です。

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F&ES学部棟

学部棟の表示です

メインの図書館

奥が Yaleのシンボル、 時計台
  これを読んでいるみなさんのなかにも、Yale大学という名前を聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。 自分で言うのもナンですが、世界でも名の通った大学の一つです。
 大学の卒業生をみても、現ブッシュ大統領、前ブッシュ大統領(父)、クリントン大統領夫妻などアメリカの歴代大統領を数多く輩出しています(ブッシュ大統領を輩出したことが誇れることなのかどうかは疑問ですが・・・)。

 大学で講演を開く人の顔ぶれをみても、国連事務総長のコフィ・アナンや元イスラエル首相のエフド・バラクが来たりします。そういうのを見ると、自分はすごいところにいるんだなぁ、と改めて思います。

と、ここまで書いたのは、別に自慢するわけではありません。
そういう大学で勉強しているってことは、クラスについていくのが大変で、死ぬ気で勉強しているんじゃないか、と思う人も多いかもしれませんが、実はそうでもないのです。
というと御幣がありますが、少なくとも僕の在籍しているFESに関しては、みんな結構のんびりやっているのです。

 これは、勉強している内容が、「環境問題」であること、FESの学生全ての目指すところが「地球環境を良くすること」であることと無縁ではないように思います。
 例えば、同じYale大学でも、ロースクールやビジネススクールなどは、結構ピリピリしているということをしばしば耳にします。クラスメートがライバルなんだそうです。
でもFESでは、「みんな仲良くやろうよ」的な雰囲気に溢れているので、非常に居心地がいいのです。助け合いの精神も、非常に強いものがあります。

 僕はこのFESで既に1年以上を過ごしましたが、精神的に追い詰められたとか、そういうことはあまりなかったように思います。
もちろんテスト前は食事しながら教科書をめくったり、夜3時まで学校にこもって勉強したり、ということもありますが、普段は、毎週金曜日になればビールを飲みに行き、日曜日になれば友達とサッカーをして汗を流します。

 ここYale大学でつらいのは、むしろ勉強ではなく、「冬の寒さ」のような気がします。
Yale大学がある街は、コネチカット州のニューヘブンです。コネチカット州と聞いてもピンと来ない人もいるかと思いますが、それも当然と言えば当然で、アメリカで4番目に小さな州(新潟県と同じくらいの広さ)で、特筆すべき名所は何もない州です。
ニューヨーク州の東隣、と言えばわかるかと思います。
ニューヘブンは札幌とほぼ同じ緯度に位置しています。
ただ、冬は札幌以上に冷え込むのです。もちろん世界には、ハバロフスクやレイキャビクのように、ニューヘブンより寒いところはたくさんあるのは知っていますが、東京以北で冬を越したことのない僕にしたら、ここでの冬は非常にパンチがありました。

 どれくらい寒いかと言うと、一番寒い時には−18℃、昼間でも0℃より暖かくなることはない、くらい寒いのです。もうちょっと直感的に言うと、誰も悪くないのに「いい加減にしろ!!」と怒鳴りたくなるくらい寒いのです。
そして当然、北国ですので、冬も長い。10月の半ばには手袋と毛糸の帽子が必要になって、そういう寒さが4月の終りまで続くのです。
アメリカの大学は9月に始まり5月に終わります。
6月〜8月までは夏休みですので、僕はニューヘブンにはいません。つまり、ニューヘブンにいる間のほとんどが冬なのです。

 ちなみに、今年の夏は、僕は研究のために南半球のマダガスカルという国に行きました。
詳しくは今後の連載で書きますが、南半球では6月〜8月が冬です。
そしてマダガスカルの冬は場所によってはかなり冷え込むのです。
そして僕はこともあろうか、その冷え込む場所で活動していたので、去年1年とこれからの1年間はずっと冬ばかりでした。
まさに「いい加減にしろ」です。僕は寒いのが嫌いなので。

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雪のニューヘブン
撮影者:尾高健

大学には綺麗な門が多い

ニューヘブンのダウンタウン
  冒頭にも書いたように、僕はこんな大学で、こんな街で、環境の問題を勉強しているのです。
今後数ヶ月に渡って、僕が一体環境のナニを勉強しているのか、マダガスカルでナニを研究してきたのか、そんなことをお伝えしていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。

2003/10/15

つづく

◇この連載の題名 『胸の高さで見た景色』 という名前について少し説明させてください。

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 僕の学部FESには、学部の名前の入ったTシャツがあります(写真参照)。胸のところにDBHとプリントがしてある何の変哲もないTシャツなのですが(一応背中にはFESと名前がプリントされています)、これには、森林関係の分野の人にとっては『おっ』と言わせるような意味が隠されているのです。
 森の木を商業的な理由として利用する際には、その木の質を測るうえで、高さに加え、幹の太さというのも重要な要素となってきます。ただ、幹の太さと言っても、根元で測るか、てっぺんの近くで測るかで太さは随分変わってきますよね。そうした混乱を避けるために、幹の太さを測る高さ、というのが世界的な基準で決められているのです。
 その基準というのがDBH(Diameter at Breast Hight:胸の高さにおける直径)です。
 もちろん胸の高さと言っても、人それぞれ違いがあるため、実際には地面から1.3メートルのところで木の幹を測るのです。
 そのため、森林関係の人にとっては、胸の高さは重要な高さなのです。

 この連載の題名を 『胸の高さでみた景色』 としたのは、そうした、森の人たちの『目線』とも言える高さから、そして胸=心で見たYale大学の様子を正直に伝えたいなという思いからなんです。

〜目 次〜
<第1回>
Yale University、ニューヘブン 2003/10/15
<第2回>
アメリカの大学院 2003/11/17 
<第3回>
環境の価値 2003/12/16
<第4回>
いざマダガスカルへ 2004/1/15
<第5回>
リサーチが進まない 2004/2/16
<第6回>
アフリカの発展 2004/3/15
<第7回>
ひき続きアフリカの発展そして環境保全 2004/4/15
<第8回>
職探し 2004/5/17 
<最終回>
困難を前に、希望を胸に、友と共に 2004/6/15 

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