感染症の流行について考えてみます



  デング熱
 突然高熱を発し、前頭部、骨、関節、筋肉の激痛を訴えるので、“骨が折れるような病気”bone-breaking disease の別名もあります。 発病4〜5日後に、熱が一時的に低くなり、3〜4時間後に再び上昇します(M型熱型)。 胴体から手足、顔にかけ丘状の発疹が現れることがあります。完全に回復するまでには1ヶ月以上かかることがありますが、例外を除き、デング熱の死亡率はゼロと言えます。例外は、発病後3〜4日目に腹痛を訴え、手足が冷たくなり、黒色のものを吐いたり、黒い便を出し、尿が赤くなり、血圧が下がり、ショック症状を起こし、治療が遅れると死亡すること(10%〜20%)があります。このような激しい出血状態を示す場合“デング出血熱”とよび、この症状を示す患者の大多数は、(1)現地で生まれた生後6ヶ月から15歳までの小児,(2)以前デング熱に繰り返し罹ったことのある大人です。
  • デング熱ウイルスに感染した人を刺したヤブ蚊の一種(熱帯シマカ)がウイルスを人に媒介します。このカはハマダラカやイエカと違い昼間でも人を刺し、都会の汚い水の中でも発生する“都市型のカ”ですから、都市でも流行が起こります。
    東南アジア、南太平洋諸島、中南米、カリブ海諸島、アフリカの熱帯地域に広く分布しており、今後、米国南部にも広がると予想され、世界で年間数百万人の患者が発生していると推定されています。
  • 予防接種は研究されていますが、現在使えるものはありませんので、ヤブカに注意する個人的防御が大切です。
    デング熱の世界的分布は 「International travel and health2005年」によれば、大洋州、東アジア、東南アジア,南西アジア、熱帯アフリカ、熱帯アメリカ、中米、カリブ海諸島など、米国南部にも時々感染者がでているようです。

International travel and health」WHO
  • 感染のリスクのある地域

 デング熱は、コレラ、マラリア、ペストなどのように特定の地域に常在して風土病となり、時に他の地域に流行を起こすような傾向を示さない都市型の感染症です。
  この感染症の流行は、1779年にインドネシアのジャカルタ、1780年には米国のフィラデルフィアから報告されたと言われており、古くから世界に広く分布していた感染症かも知れません。しかし当時は、この病気を確認する診断法が確立されていなかったことを念頭に入れる必要があるでしょう。1823年から1905年までの間にアフリカのサンジバー(タンザニア東部の島)、インド、西インド諸島、香港などから報告されています。
  1925年にはオーストラリア、1927年にはチュニジアとギリシャ、1931年には台湾、1942年には米国、日本、1980年代から1990年代には大きな流行が東南アジアの国々、熱帯および亜熱帯の南アメリカ、中米、インドなど世界的流行の様相を呈しています。

  エイズ
 エルトール・コレラ、デング熱の流行に次いで、世界的な流行を起こしたのは“エイズ”です。エイズが発見されたのは、1981年の中頃ですが、診断が出来るようになったのは1983年です。この感染症は、それより約20年ほど前からアフリカに存在していたと考えられることは、その頃アフリカで採集した血清の検査から明らかになっているようです。
  この感染症の検査法が確立してから、この病気はアフリカから他の地域に波及し、現在では“世界の何処でも感染するリスクがある”と考えられています。
  このエイズの病原ウイルスであるHIVの感染経路は、B型肝炎ウイルスと同様に“性行為(リスク8)”“および医療行為を受けて(リスク9)”です。このリスク9には、消毒不完全な医療器具を使用する医療行為の他、麻薬の回し刺し、ピアシング、ディープキスなどが含まれます。エイズはその発生地域と考えられる熱帯南アフリカに最も多くの感染者がいますが、南西および東南アジア諸国にも感染者は少なくないようです。

International travel and health」WHO
2005年3月20日
  風土病はその常在地だけにとどまるとは限らない
  風土病の一つである“マラリア”
  ペスト
  デング熱
  エイズ
1971年から2004年までの感染症についてのトピックス
“出血熱”の種類 感染経路、死亡率及び分布
肝炎
ワクチンについての2つの見方

「海外で健康にくらす」
予防接種、感染症への対応

OMC
オーハーシーズ・メディカル・
コンサルタンツ代表
医学博士
渡辺 義一
 
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