表CM 感染症への対応に役立つ情報
感染症の対策、感染経路、潜伏期間

米国公衆衛生学会が「Control of Communicable Diseases Manual , David L. Hayman 編集 2008年の年報」今後はCCM 2008 と呼びます。
長期滞在者を含む海外旅行者に注意を促している感染症を病原体の種類に依り、4グループに分け、各グループに属する感染症について表CMの左側から、病名番号、病名、対応策、感染経路及び潜伏期間の5項目で示してあります。

感染症を病原体の種類に依り分けた 4グループの表

<表の項目の説明>

ウイルス性感染症

番号 病名 対応策 感染経路 潜伏期間
1 2 3 4 5 6 7 8 9
1
インフルエンザ
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜3日
2
新型インフルエンザHINI
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
約7日
3
トリ インフルエンザ
A
 
 
 
3
 
 
 
 
 
 
3〜7日
4
乳頭腫
A
 
 
2
 
 
 
 
 
8
 
1〜20ヵ月
5
B型肝炎
A
 
 
2
 
 
 
 
 
8
9
45〜180日
6
小児まひ
B
 
1
2
 
 
 
 
 
 
 
3〜35日
7
麻しん
B
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
7〜22日
8
風しん
B
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
14日〜22日
9
おたふくかぜ
B
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
14日〜25日
10
水ぼうそう
B
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
14日〜22日
11
日本脳炎
B
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
5〜15日
12
ダニ脳炎
B
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
5〜15日
13
ロタウイルス小児水様胃腸炎
B
 
1
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜3日
14
A型肝炎
B
 
1
2
 
 
 
 
 
 
 
15〜50日
15
狂犬病
B
 
 
 
3
 
 
 
 
 
 
3〜8週間
16
黄熱
B
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜7日
17
エイズ
C
 
 
 
 
 
 
 
 
8
9
1〜15年
18
C型肝炎
C
 
 
 
 
 
 
 
 
 
9
2週間〜6ヵ月
19
ノロウイルス急性胃腸炎
D
 
1
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜2日
20
ハンタウイルス腎症候性出血熱
D
 
 
 
3
 
 
 
 
 
 
2〜4週間
21
ハンタウイルス肺症候群
D
 
 
 
3
 
 
 
 
 
 
3日〜6週間
22
D型肝炎
D
0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2〜8日
23
E型肝炎
D
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
15〜64日
24
SARS
D
0
1
2
3
4
 
 
 
 
 
2〜10日
25
デング熱
D
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜7日
26
西ナイル熱
D
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
5〜15日

□UP□

細菌性感染症

番号 病名 対応策 感染経路 潜伏期間
1 2 3 4 5 6 7 8 9
31
ジフテリア
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
2〜5日
32
破傷風
A
 
 
 
 
 
5
 
 
 
 
3〜21日
33
百日咳
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
6〜20日
34
b型インフルエンザ菌感染症
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
2〜4日
35
腸チフス
A
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
3〜60日
36
腸チフス以外のサルモネラ症
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
2〜10日
37
肺炎球菌感染症
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜3日
38
流行性ずいまくえん
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
2〜10日
39
ライム病
A
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜35日?
40
幼児結核
A
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜2年
41
6歳以上の結核
C
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜2年
42
細菌性赤痢
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
1〜2日
43
出血性大腸炎(大腸菌0157:H7)
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
2〜10日
44
レジオネラ症
C
 
 
 
 
 
 
6
 
 
 
2〜10日
45
淋病(りんびょう)
C
 
 
 
 
 
 
 
 
8
 
2〜7日
46
梅毒(ばいどく)
C
 
 
 
 
 
 
 
 
8
 
10〜90日
47
ワイル氏病
B
 
 
 
 
 
 
6
 
 
 
2〜30日
48
ワイル氏病以外のレプトスピラ症
C
 
 
 
 
 
 
6
 
 
 
2〜30日?
49
腺(せん)ペスト
B
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
1〜7日
50
肺ペスト
D
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜4日
51
リケッチア症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜15日
52
ぶどう球菌症
C
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
不定
53
連鎖球菌症
C
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
1〜3日
54
カンピロバクター感染症
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
1〜10日
55
コレラ
A
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
12〜24日

□UP□

真菌性(カビ類)感染症

番号 病名 対応策 感染経路 潜伏期間
1 2 3 4 5 6 7 8 9
61
コクシジオイド眞菌症
C
 
 
 
 
 
5
 
 
 
 
1〜4週
62
カンディダ症
C
 
 
2
 
 
 
 
 
 
 
2〜5日
63
ヒストプラスマ症
C
 
 
 
 
 
5
 
 
 
 
3〜17日

□UP□

寄生虫性感染症

番号 病名 対応策 感染経路 潜伏期間
1 2 3 4 5 6 7 8 9
71 アメーバ赤痢
C
 
1
2
 
 
 
 
 
 
 
2日〜数年
72 サイクロスポーラ症
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
7日前後
73 サイクロスポリダ症
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
7日ぐらい
74 ランブルべんもう虫症
C
 
1
 
 
 
 
 
 
 
 
3〜25日
75 住血吸虫症
C
 
 
 
 
 
 
6
 
 
 
2〜6週
76 リーシマニア症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
2週〜8ヵ月
77 ロア糸状虫症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
4ヵ月〜8年
78 アフリカ トリパノソーマ症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜22日
79 アメリカ トリパノソーマ症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
6〜14日
80 フイラリア症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
3〜6ヶ月
81 オンコセルカ症
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
約1年
82 マラリア
C
 
 
 
 
 
 
 
7
 
 
7〜40日以上
83 鈎虫症
C
 
 
 
 
 
5
 
 
 
 
2週〜数ヶ月

□UP□

病名番号

1種類の病名につき固有の病名番号をつけてあり、ウイルス性感染症では1から25まで、細菌性感染症では31から55、真菌性感染症では61から63、寄生虫性感染症では71から83までとなっています。この病名番号は、今後必要な情報を集めて新しく整理する際に便利なためです。

□UP□

対応策

左の感染症に対する予防接種と抗微生物による治療についての2008年現在の情報であり、
対応策が
 - 予防接種も治療薬もグローバルのレベルで開発されていることを示し、
 - 予防接種は開発されているが、治療薬は未開発であり、
 - 予防接種は未開発であるが、治療薬は開発済み、
 - 予防接種、治療薬共に未開発であることを示しています。

尚、すでに開発されている予防接種の中には日本国内では一般に接種を受けられないものもあります。これについては後に、「予防接種について考える」の中で説明したいと思います。

□UP□

感染経路

感染症の病原体が外部から人の体に侵入する方法のことで10種類あり、表CMでは0から9までの数字でしめしてあります。

-  感染患者の糞便、尿、血液、稀に内臓や組織を、使い捨てのLatex 或いは調理用のゴム手袋などをはめずに取り扱って感染
- 飲食物に十分熱を通さずに摂って感染
- 感染者に接触する、または病室や多くの人が集まる処にマスクをせずに行き感染する。
マスクの効果は1994年、中国から東南アジアに SARS が流行した際、使い捨て外科手術用マスクを米国の医療関係者が着用し完全とは言えないまでも、予防効果があったことを認めております。またこの5年くらいトリ インフルエンザの人への感染 流行を予防する上で、マスクの使用が大切なことを平成9年3月26日のインフルエンザ専門家会議で報告しております。現在問題になっているH1N1インフルエンザの流行の対応策として、4月から5月の中旬まで対応手段の主力が手洗いと嗽であるかのような報道がなされていたのは残念なことです。
-  動物からの感染で、動物には近づくな、近づけるな が鉄則です。
動物が人に噛みついたり、引っ掻いたりするのは:
  • 子供を連れている時
  • さかりの付いている時
  • 自分の領地を侵されたと思った時
  • 狂犬病に罹っている時

このような条件を動物の外見で見分けることは不可能です
実際に先進国でも動物から被害を受けることは少なくありません。その際
狂犬病が流行していなくても必ず以下の処置をしてから病院に行く必要があります。

  • 局所を水で5分くらい洗い流し、局所にゴミや汚いものがあればつまみ出す
  • 局所に消毒用局方ヨードチンキ、または70%のエチルアルコールまたはオキシドールを注ぎ込み、直ちに近くの病院に行くことが、狂犬病や破傷風の発病を防ぐ第一歩と言われています。

一番大事なことは動物に近づかない、近づかせないことを子供に良く言い聞かせておくことです。大きな動物だけでなく、ネズミのような小動物も油断はできません。ドブネズミのように大きなネズミでなく、野ネズミのように小さくて,直径7ミリの穴があれば侵入できるものもあります。

  • ドアーに5ミリ以上の穴があれば金属の板で塞ぐ
  • ネズミの食物を断つ
    乾燥食物,例えばうどん、そばのような乾燥食料は、ボール箱でなくタッパーまたは缶などで保存する
    生ゴミ、食物類は台所に放置せず、直ちに下水に流す
    食器類は使用後、流し場に放置せず直に洗い流す
  • ペツトは飼わないことが原則ですが、止むを得ず飼う場合は、家の中で飼うこと、庭で飼うことは家族に感染症を持ち込む危険があります。食物は必ず熱を通したものを与え、乾燥した動物用餌は与えないこと
ネズミが原因で起きる感染症は数多く、表Bに示すように、アフリカのサハラ砂漠より南方の熱帯アフリカに分布し、感染者から健康な人へも感染するラッサ熱、 ベネズエラ・ブラジル出血熱、ハンタウイルス腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群、その他、ネズミチフス、鼠咬症(そこうしょう)などがあります。
何れにしても、ネズミの食物を断つことが、個人でできる最良の対策法です
-  動物製品、特に毛のついた皮に、たんそ菌の芽胞(スポア)の付いていることがあり、肺たんそ を起こすと死亡することがあります。特に西インド諸島では注意が大切なようです
-  土の上を裸足、またはサンダル履きで歩いたり、土煙りの中マスクをせずに歩いて感染するものです
-  農業用水、川、湖などの淡水に手を入れたり、泳いで感染するもので、住血吸虫症はサハラ砂漠の南方の熱帯アフリカに特に多く、レプトスピラ症は世界中に広く分布しております
-  昆虫に刺されて感染するものは虫よけ薬で防ぐことを考えます
虫よけ薬(Insect Repellent)にはDeet,Permethrin, Deltamethrin,の3種が主なもので、4番目は蚊取り線香があります。 使用法はこのホームページのマラリアについて をご参照ください
抗微生物薬で感染症を予防できるのはマラリアのみです
-  性行為で感染するもので、先進国、途上国を問わず感染者が多いと言われますが、特に途上国の地方では、症状が慢性になっている者が多いと言われています。女性が性行為で感染し、時には症状が明らかでないにも関わらず、後に子宮頚がんを起こすこともある乳頭腫(Papilloma)は、ウイルス性感染症の1種で、最近、予防接種が開発されました。この病気がどの程度分布しているかは不明です
-  医療を受けて感染するもので途上国に多いものですが、先進国でも時々起き、多くの場合、医療関係者のミスに依るもののようです。途上国では, 歯や目の小手術に用いる器具の消毒不完全が原因のようです。途上国でビューティサロンや理髪店で剃刀を当てられることもエイズやB型感染、C型肝炎に感染する危険が無いとは言えません。途上国で大きな手術を受ける際、手術器具の消毒は完全であっても輸血、止血剤などから感染する恐れも否定できず、WHOは途上国での臓器移植は否定的です。
以上、10種類の感染経路を簡単にのべましたが、これらは病原体が外部から人体の中に侵入する方法です。その他、人体内に常在している細菌が、通常、存在していない部位に侵入し病気を起こすことがあります。女性に多いものとしては、大腸に常在している腸内細菌が、肛門から短い尿道を通って膀胱に入り炎症を起こす上行性膀胱炎、稀には大腸の粘膜を通って、膀胱に侵入する場合もあり、男女を問わず起こり得る病気と考えられています。熱帯地方で下痢を起こした後、大腸にいる常在菌が空腸に入り脂肪の吸収を妨げ、空腸の粘膜に変化を起こす熱帯性空腸炎も自家感染の1種です

□UP□

感染経路と潜伏期間

潜伏期間とは、人体内に侵入した病原体が、感染症の症状を現すまでの期間を言います。感染経路と潜伏期間には病気の流行に深い関係があり、1種類の病原体は必ずしも1種類の感染経路ではなく、2種類またはそれ以上の感染経路で人の体内に侵入することが表CMで分かります。また体内に侵入した病原体の種類により潜伏期間に違いがあり、短いもので1日〜3日(インフルエンザ)、長いものでは15年位(エイズ)などがあります。例えば、感染経路1の飲食物から感染する細菌性赤痢(特にshiga赤痢)は潜伏期間が約1日で、第二次世界大戦の末期に同じく潜伏期間が1〜3日の肺炎球菌感染症と共に日本国内で大流行を起こし多数の死者を出しているようです。
感染経路2の感染者から健康な人に病原体を感染させる飛沫感染には、毎年10月から流行を起こすインフルエンザがあり、その潜伏期間は1〜3日、時に集団感染の報じられるノロウイルス急性胃腸炎は、感染経路1の飲食物、及び感染経路2の飛沫感染で、潜伏期間が1〜2日であり、感染経路と潜伏期間には、感染症の流行に深い関係があることが分かります。
また感染経路に大きな影響を与えるものには、

  1. 気候・風土
  2. 社会・文化環境
  3. 衛生環境

があります。
気候風土には、気温、降雨量、天災など私たちの持つ技術では対応できないものが多く、地球レベルでの気温の上昇により、一部の地域では、干ばつ、水不足、熱帯的昆虫の増加に伴う、マラリアのような熱帯性感染症の流行地拡大を起こしています。また大型の暴風雨や地震などで、集団生活を余儀なくさせられる場合も感染症の発生の原因となります。
社会文化環境には政治、宗教、生活習慣、民族などが原因で、内乱や戦争の結果、住民や動物の移動、難民の増加などが感染症の発症と増加の原因となります。
また先進国では飲食物の大量生産により集団的感染症が発生します。

□UP□

予防接種について

感染症への対応策として予防接種は有力な手段です。 表CM の対応策から予防接種の情報を見つけることができます。 とあれば左側にある病名の感染症に対し、予防接種も抗微生物薬による治療もすでに開発されていることを示し、であれば予防接種は開発されているが、治療薬は未開発であり、とあれば、予防接種は未開発だが、治療薬は開発済みであり、であれば予防接種も治療薬も未開発であることを示しています。 
26種類のウイルス性感染症のうち、16種類が予防接種で予防できることになり、10種類が予防できないことになります。
25種類の細菌性感染症では、12種類が予防接種で予防でき、13種類が予防できないことになります。 真菌性感染症3種類と寄生虫性感染症の13種類は全部Cを示しているので、予防接種による予防は不可能ということになります。

予防接種に使用するワクチンについて

生ワクチンと不活化ワクチンの2つのグループに大別されます

  1. 生ワクチン類は、接種すると体内で自分で増殖し、量を増やして免疫力を高め、接種を受けた人が健康な人であれば、生ワクチンの種類により1回の接種で約5年から10年間、持続する免疫を作ることができます
  2. 不活化ワクチン類は、生ワクチン類のように、人体内で増殖して量を増加することが無いので、2回またはそれ以上の接種を繰り返し、免疫力を保っていく必要があります。
    免疫を作る能力のない人(免疫不全の人)への生ワクチンの接種は、ワクチンによる副作用を起こす恐れがあります
免疫不全の原因の主なものは、
  • 白血病、悪性腫瘍の進行している人
  • 最近まで臓器移植後の拒絶反応に対する治療をうけていた人、コーチゾンまたはX線治療を長く受けていた人(量的限度については不明)
  • エイズの進行している人
  • 脾臓を切除した人
妊娠と授乳
  • 女性が風疹の予防接種を受けた場合は2ヶ月間は避妊する
  • 生ワクチンは妊産婦には接種できないが、、不活化ワクチンは接種できる
  • 母親が予防接種を受けていても、授乳されている乳児には影響はない
免疫抗体を持っている人に対する生ワクチンと不活化ワクチンの免疫効果
  • もし生ワクチンの接種を受ける予定の人が、すでにそれに対して免疫抗体を持っている場合は、生ワクチンの免疫効果を示すことができません

例として: 生後7か月までの乳児、ガンマーグロブリンの注射、または、輸血を受けた人も7か月間は免疫効果を期待できないといわれています
他方、不活化ワクチン類は、ワクチンに対する免疫抗体を既に持っていても免疫を作ることができますので、母親の胎盤をとおして免疫抗体を受け取っている新生児に対しても不活化ワクチン類は免疫抗体を作ることできます。これが新生児に対して行われるB型肝炎ワクチン、三種混合ワクチン、b型インフルエンザ菌ワクチンなどです。
他方、新生児の多くは母親から小児麻痺に対する免疫抗体を胎盤を通して受け取っている場合があります。現在使用されている小児麻痺の生ワクチンは圧倒的大量のウイルスを含むので、血液中に含まれる免疫抗体の予防能力を突破して腸内に達し、免疫を作らせると考えられています。尚、現在多くの先進国では不活化小児まひワクチン(IPV)を使用しています。

ワクチンは目標とする感染症以外の感染症は予防しない。

即ち、1種類のワクチンは目標とする1種類の感染症以外は予防しない。例外は小児結核の予防に用いるBCGが、らい病も予防すると言う報告があることです
従って、2種類、あるいはそれ以上の感染症を予防しようとする場合には各感染症に対するワクチンを混合した混合ワクチンで対応する必要があります。その場合生ワクチンどうし、不活化ワクチンどうしで混合ワクチンを作ることはできますが、生ワクチンと不活化ワクチンを混合することは成分の違いから不可能です。
2008年末現在、最も多種類のワクチンを混合して実施されているものは、米国で使用されている三種混合ワクチン、B型肝炎ワクチン、および不活化小児麻痺ワクチンを混合した五種混合不活化ワクチンで、何れのワクチンも接種を始める年齢、接種の間隔と回数が同様のものです。

免疫力強化剤(Adjuvant)

先に述べたように不活化ワクチン類は生ワクチンに比べ免疫力が弱いため、免疫力を強める目的でアルミニウム塩を加えることがあり、三種混合ワクチン、B型肝炎ワクチンをはじめA型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン、新型インフルエンザ(NIHI)ワクチンなど、数多くのワクチンがアルミニウム塩を含んでいます。生ワクチン類には含みません。
専門用語でアルミニウム塩類をアルミニウムゲルと呼び、この物質を含むワクチン類は必ず筋肉内に注射する必要があり、もし皮下注射をすると、その部分が硬くしこりができ、ワクチン成分の吸収が遅れてワクチンの免疫効果を低下させる結果となります。一方、生ワクチン類は、皮下注射で接種するのが一般の常識と考えてよいでしょう。
最近、アジュバントは副作用が強いので接種すると危険だそうだと言う話がありますが、これは恐らく今から 50年前の話を上げているのではないかと思います。当時、米国のメルク社が、油性のアジュバントを作り、この アジュバントを含むワクチンを接種後、局所に膿瘍を作り、自然治癒せず手術で取り除く必要がありました。 以後、油性のアジュバントを使用したワクチンは製造されず、アルミニウムゲルが唯一のアジュバントとして 使われています。

□UP□

2009年10月22日

  風土病はその常在地だけにとどまるとは限らない
  風土病の一つである“マラリア”
  ペスト
  デング熱
  エイズ
1971年から2004年までの感染症についてのトピックス
“出血熱”の種類 感染経路、死亡率及び分布
肝炎
ワクチンについての2つの見方

「海外で健康にくらす」
予防接種、感染症への対応

OMC
オーハーシーズ・メディカル・
コンサルタンツ代表
医学博士
渡辺 義一
 
海外生活必需品
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網羅した総合窓口


制作:海外生活(株)