表 海外旅行者が注意を要する感染症について
CDC Health Information for International Travel 2008
編集者名;Paul M.Arguin,Phillis E. Kozarsky,Christie Reed、
出版:U.S. Department of Health and Human Services
今後、HIIT 2008年 とよびます。
海外旅行者や海外滞在者に注意を促しているの
- ウイルス性感染症(24種)
- 細菌性感染症(21種)
- 真菌性(カビ類)感染症(3種)
- 寄生虫性感染症(13種) 合計61種の感染症についての情報を以下の表に示します
1 予防接種
2 治療薬(抗微生物薬)
3 各感染症の病原体が人体内に侵入する経路(リスクとよぶ)
4 人体内に侵入した病原体が病気の症状を現してくるまでの期間(潜伏期間)
ウイルス性感染症
病名
|
感染経路
|
潜伏期間
|
|||||||||
排
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
6
|
7
|
8
|
9
|
||
小児まひ |
●
|
●
|
3〜35日 | ||||||||
インフルエンザ |
●
|
1〜3日 | |||||||||
トリ・インフルエンザ |
●
|
- | |||||||||
麻しん |
●
|
7〜22日 | |||||||||
おたふくかぜ |
●
|
14日〜25日 | |||||||||
風しん |
●
|
14日〜22日 | |||||||||
みずぼうそう |
14日〜21日 | ||||||||||
日本脳炎 |
●
|
5〜15日 | |||||||||
ダニ脳炎 |
●
|
5〜15日 | |||||||||
エイズ |
●
|
●
|
1〜15年 | ||||||||
ノロウイルス急性胃腸炎 |
●
|
●
|
1〜2日 | ||||||||
ハンタウイルス肺症候群 |
●
|
2日〜6週間 | |||||||||
ハンタウイルス腎症候性出血熱 |
●
|
2〜4週間 | |||||||||
ロタウイルス小児水様下痢症 |
●
|
1〜3日 | |||||||||
狂犬病 |
●
|
3〜8週間 | |||||||||
A型肝炎 |
●
|
●
|
15〜50日 | ||||||||
B型肝炎 |
●
|
●
|
●
|
45〜180日 | |||||||
C型肝炎 |
●
|
2週間〜6ヶ月 | |||||||||
D型肝炎 |
●
|
2〜8週間 | |||||||||
E型肝炎 |
●
|
15〜64日 | |||||||||
デング熱 |
●
|
3〜7日 | |||||||||
てんねんとう |
●
|
7〜19日 | |||||||||
黄熱 |
●
|
3〜6日 | |||||||||
重症急性呼吸器症候群(SARS) |
●
|
●
|
●
|
●
|
●
|
3〜10日 |
細菌性感染症
病名
|
感染経路
|
潜伏期間
|
|||||||||
排
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
6
|
7
|
8
|
9
|
||
コレラ |
●
|
12〜24時間 | |||||||||
ジフテリア |
●
|
2〜5日 | |||||||||
破傷風 |
●
|
●
|
3〜21日 | ||||||||
百日咳 |
●
|
6〜20日 | |||||||||
肺炎球菌症 |
●
|
1〜3日 | |||||||||
b型インフルエンザ菌感染症 |
●
|
2〜4日 | |||||||||
流行性ずいまく炎 |
●
|
2〜10日 | |||||||||
腺(せん)ペスト |
●
|
1〜7日 | |||||||||
肺ペスト |
●
|
1〜4日 | |||||||||
腸チフス |
●
|
3〜60日 | |||||||||
サルモネラ症(腸チフス以外のもの) |
●
|
2〜10日 | |||||||||
細菌性赤痢 |
●
|
1〜3日 | |||||||||
出血性大腸炎 |
●
|
2〜10日 | |||||||||
レジオネラ症 |
●
|
2〜10日 | |||||||||
レプトスピラ症 |
●
|
●
|
2〜30日 | ||||||||
ライム病 |
●
|
3〜35日 | |||||||||
りんびょう |
●
|
2〜7日 | |||||||||
ばいどく |
●
|
10〜90日 | |||||||||
リケッチア症 |
●
|
3〜14日 | |||||||||
小児結核 |
●
|
●
|
2〜5歳 | ||||||||
成人の結核 |
●
|
●
|
1〜2年 |
真菌性(カビ類)感染症
病名
|
感染経路
|
潜伏期間
|
|||||||||
排
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
6
|
7
|
8
|
9
|
||
コクシジオイド眞菌症 |
●
|
1〜4週 | |||||||||
カンディダ症 |
●
|
2〜5日 | |||||||||
ヒストプラスマ症 |
●
|
3〜1ヶ月 |
寄生虫性感染症
病名
|
感染経路
|
潜伏期間
|
|||||||||
排
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
6
|
7
|
8
|
9
|
||
アメーバ赤痢 |
●
|
●
|
2日〜数年 | ||||||||
サイクロスポーテ症 |
●
|
1週 | |||||||||
サイクロスポリダ症 |
●
|
1週 | |||||||||
ランブルべんもう虫症 |
●
|
3〜25日 | |||||||||
住血吸虫症 |
●
|
2〜6週 | |||||||||
リーシマニア症 |
●
|
2週〜8ヶ月 | |||||||||
マラリア |
●
|
9日〜40日以上 | |||||||||
ロア糸状虫症 |
●
|
4ヶ月〜8年 | |||||||||
フイラリア症 |
●
|
3〜6ヶ月 | |||||||||
オンコセルカ症 |
●
|
通常1年 | |||||||||
アフリカ・トリパノソーマ症 |
●
|
3〜22日 | |||||||||
アメリカ・トリパノソーマ症(シャガス病) |
●
|
5〜14日 | |||||||||
鈎虫症 |
●
|
2,3週〜数ヶ月 |
予防接種について
表に示す各感染症の病名の下に(星マーク)で示してあります
(黒星マークが2つ)
ワクチンがどこかの国で開発されており、通常、日本国内でも予防接種が受けられます
- ウイルス性感染症では: 小児麻痺、インフルエンザ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水ぼうそう、日本脳炎、狂犬病、A型肝炎、B型肝炎,黄熱など
- 細菌性感染症では: コレラ、ジフテリア、破傷風、百日咳、小児結核など
- 真菌性感染症および寄生虫性感染症:黒星マーク2つを示すものはありません
(黒と赤の星マーク)
すでにワクチンが開発されているが、日本国内では通常接種を受けることのできない
- ウイルス性感染症では: ダニ脳炎、ロタウイルス小児水様下痢症、天然痘など
- 細菌性感染症では: 肺炎球菌症、b型インフルエンザ菌感染症、流行性髄膜炎、腺ペスト,腸チフス、ライム病など
- 真菌性および寄生虫性感染症には、ひとつもありません
(赤星マークが2つ)
感染症に対するワクチンは2007年末現在、世界のどの国でも開発されておらず、どの国でも予防接種を受けられないことを示してあります
- ウイルス性感染症では:
1 トリ・インフルエンザ
2 エイズ
3 ノロウイルス急性胃腸炎
4 ハンタウイルス肺症候群
5 ハンタウイルス腎症候性出血熱
6 C型肝炎
7 D型肝炎
8 E型肝炎
9 デング熱
10 重症急性呼吸器症候群(SARS)
- 細菌性感染症では:
1 肺ペスト
2 腸チフス以外のサルモネラ症
3 細菌性赤痢
4 出血性大腸炎
5 レジオネラ症
6 レプトスピラ症の大部分
7 淋病
8 梅毒
9 リケッチア症
10 成人の結核
- 真菌性感染症では:
1 コクシジオイド真菌症
2 カンディダ症
3 ヒストプラスマ症
3種の真菌症全部
- 寄生虫性感染症では:
1 アメーバ赤痢
2 サイクロスポーラ症
3 サイクロスポリダ症
4 ランブル鞭毛虫症
5 住血吸虫症
6 リーシマニア症
7 マラリア
8 ロア糸状虫症
9 フィラリア症
10 オンコセルカ症
11 アフリカ・トリパノソーマ症
12 アメリカ・トリパノソーマ症(シャーガス症)
13 鈎虫症
13種の寄生虫症全部
結局,HIIT2008に示す61種類の感染症のうち36種は予防接種による予防ができないことがわかります。
先に述べたように2007年末現在、日本国内で受けることのできない9種類の感染症を加えると、日本では45種類の感染症が予防接種で予防できないことになり、海外旅行や海外滞在予定者が感染症から身を守るためには、予防接種のみに頼るわけにはいかないことが分かります
治療薬(抗微生物薬)について
感染症の治療薬は、人体内に侵入して病気を起こしている病原体の増殖を押さえ、人体内の病原体に対する免疫反応で健康の回復を助けるものです。このような働きをする治療薬を抗微生物薬(Anti-microbials)とよびます。
表 海外旅行者に注意を要する感染症についての中で、各感染症の病名の下の
(黒丸)星マークの右
その感染症に対する治療薬はすでに開発されてることを示す
(赤丸)星マークの右
2007年末現在、未開発であることを示しています。但し、開発されている治療薬が全て日本国内で入手できるか否かは不明です。
日本国内ではワクチンが未開発(赤星マーク2つ)、また、日本国内では予防接種が受けられない(黒星と赤星マーク)の感染症について治療薬の存在を調べてみると:
ダニ脳炎、トリ・インフルエンザ、ノロウイルス急性胃腸炎、ハンタウイルス腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群、ロタウイルス小児水様性下痢症,D型肝炎、E型肝炎、デング熱、天然痘,SARSなどのウイルス性感染症が、予防接種も治療薬でも対応できないことが分かります。
これに対し、コレラ以下成人の結核までの細菌性感染症、コクシジオイド真菌症以下
ヒストプラスマ症まで3種の真菌性感染症、およびアメーバ赤痢以下鈎虫症までの13種の寄生虫性感染症は、予防接種では対応できないが、治療薬で治療できることが分かります。
2008年6月10日