感染症の対応


「HIIT」は海外旅行者(海外赴任者も長期旅行者として含みます)が注意すべき50余りの感染症をあげています。これらの感染症を病原体の種類によって分けると、

ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性(カビ)感染症、寄生虫性感染症の4つのグループに分けられます。 これらのグループに属す各感染症への対応を考える前に、感染症とよばれる一群の病気の原因となる病原体への対策が目標となります。

感染症の病原体への対応には以下の3つがあります。

  1. 薬物による感染者の治療と予防
  2. 予防接種による予防
  3. 病原体が人体内に侵入する経路(リスク)を遮断

1.薬物による対応

  1. 薬物による感染者の治療;治療に使用する薬物で病原体に直接作用して人体内での増殖を防ぐものを総称して抗微生物薬 ( Anti-microbial Drugs または Anti-microbials) とよび、抗微生物薬 は更に 抗ウイルス薬(Anti-viral Drugs),抗細菌薬(Anti-bacterial Drugs), 抗真菌薬 (Anti-fungal Drugs)および抗寄生虫薬 (Anti-parasitic Drugs)など、病原体の種類により大別されています。
  2. 抗寄生虫薬によるマラリアの予防;抗微生物薬のうち、抗寄生虫薬だけが現在、治療のほか予防にも使用されています。
  3. 抗微生物薬による治療の問題点;感染症の病原体が、抗微生物薬に対し抵抗性になってくる傾向があることを以前にも述べました。このことを念頭におき感染症治療の理想的なステップは以下のようです。
  • 感染症の病原体を出来る限り早く確認する
  • 確認した病原体に対して有効な抗微生物薬を選び出す。このためには、病原体についての情報が必要であり、臨床検査室を含む治療に関わる人達が、薬物抵抗性微生物についての検査はもとより、常に情報を集めていることが大事です。WHOのwebsiteで情報の一部を見ることが出来ます。 医療関係者が病原体を確認せずに抗微生物薬を使用することは、抵抗性病原体が広がることに繋がり、現在、世界が直面している状態を更に悪化させる結果になります。抗微生物薬に抵抗性を示す病原体は、既に、ウイルス性、細菌性,寄生虫性に認められており、他のものについては未だ明らかでは無いようですが、油断はできません。

2.予防接種による対応

 予防接種は対象とする1種類の感染症のみを予防するもので、抗微生物薬のように数種類の感染症に対しての予防効果はありません。唯一の例外は、小児結核を予防するBCG ワクチンが“ハンセン病”を予防することです。 ウイルス性感染症の一部と細菌性感染症の多くは予防接種で予防できますが、2005年末現在、真菌性および寄生虫性(マラリアを含む)感染症に対する予防接種は、研究はされていますがまだ存在しません。
  予防接種で予防できる感染症は、現在25種類くらいあり、接種を始める年齢や時期、接種方法(皮内、皮下、筋肉内など)、接種回数、接種の間隔を守れば、明らかな予防効果が期待できます。然し、流行が起きてから予防接種を始めても間に合いません。多くの予防接種は接種してから予防効果を示すまでに大体1ヶ月から1年を要しますので、感染症の流行が起きてから予防接種を受けるのでは遅すぎる場合があります。そのような場合は、その感染経路(リスク)を防ぐ対策をとることが重要で、そのためには、その感染症の病原体をできるだけ早く確認し、必要な予防策を実行することが流行地への対策となります。このリーダーシップをとるのは公衆衛生当局であると考えます。

3.病原体が人体内に侵入する経路(リスク)を遮断

 この対応策は以前述べた、病原体が人体に侵入する9つの経路(リスク)への対応です。これは保健当局者が直接行うと共に、この情報を迅速に一般の住民に知らせ、各人が対応を実行しなければならないものです。 リスクへの対応を予防接種と併行して実施することによって、予防接種単独より、一層の予防効果があがることは疑いのないところです。

2006年4月28日
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「海外で健康にくらす」
予防接種、感染症への対応

OMC
オーハーシーズ・メディカル・
コンサルタンツ代表
医学博士
渡辺 義一
 
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制作:海外生活(株)